文化祭編─宮地悠美
一週間が過ぎ、文化祭の準備が遅れていた。分担されていたのが一通り終わり、トイレに向かっていた。
「涼更君だよね、キミ」
後ろから声をかけられ、振り向くと黒髪のポニーテールの女子がいた。スカートの丈は長く、太ももは、見えない。
可愛いというより、清楚な感じの女子。
「そうじゃ、なかった?えっ、ええ......違うの、九条先輩に聞いてたのに。間違──」
雰囲気と違い、慌てる彼女。可愛いと思う。
「涼更です。間違ってませんよ、聞き惚れてしまって、返すのが遅くなっただけです」
「よかった~。私は二年生、宮地悠美。好きなの、涼更君が。付き合ってくれないかな」
浮かべているのは微笑みだった。
どこか少し脆く壊れそうに感じる表情だった。
「ミヤチ、ユミ......先輩。もう付き合ってるんです、彼女がいて......」
頬を小さく掻きながら返答する。
「そう、なの......か。文化祭、もう一度告白するから。その時にもう一度返事を聞かせてほしい」
そう言い残し、踵を返し、姿が見えなくなる。
教室に戻り、作業を再開する。
宮地悠美という先輩、九条先輩に聞いたと言っていた。部活以外関わりがない。無口であまり声を聞いたことがない。
二度ほど声をかけられただけである。




