夏休み─夏休み最初のデート?女子って怖すぎる
8月5日。
昼前。
俺と星峰さんは、ショッピングモールに来ていた。夏休み最初のデートだ。
俺達の格好はオシャレにきめていなかった。ラフな格好だ。
どの店をまわろうか、二人で悩んでいると突然俺の視界が暗くなり、後ろから星峰さんの声がした。
「だ~れだっ!」
「星峰さんだよね。急にやめてよ」
「私じゃないよ」
隣から星峰さんの声がした。
えっえっ、じゃあ誰なんだ。
すぐに視界が明るくなり、目の前に柚羽さんが現れた。
「えっ、柚羽さん!どうしてここにっ」
「香の後をつけてきたの。香だけ涼更君と一緒なんてずるいから、話したいこともあるし」
「ああっ、柚羽姉ー。何でいんの、ここに」
店中に響く程の声量を出す星峰さん。
「涼更君の隣をあるっ、うだだだ」
柚羽さんの頬を強くつねりながら、罵声を浴びせる星峰さん。
「やめてあげて、星峰さん。その辺に......」
俺は、星峰さんを制する。
「もうー、痛いよ。香ー、酷くない。ねえ、そう思うよね、涼更君」
柚羽さんに同意を求められる。
答えにくい。
「これでも足りないぐらいなんだけど。本当なら、もっと──」
シュッと、俺の背後に隠れる柚羽さん。
「怖いよー、涼更く~ん。香が酷いことをー」
甘くて、可愛い声で言う柚羽さん。
「柚羽姉っ!いいかげ──」
星峰さんが声を荒らげていると、低くて、落ち着いた声が聞こえた。
「ユズちゃんじゃん。私との約束を破って、仲良くしてんの?その人たちと」
膝丈のチェックワンピースにスニーカーといった格好で茶髪の長い髪の女性が発した声だった。本当に落ち着いている印象の女性だ。
「こはっちー。まあね、こっちは妹で、彼が妹の彼氏ぃ。ごめんってば、こはっち。今度は破らないから、ねぇ~許して」
最初のうちは明るく言い訳を述べていたが、優しい目つきだった友達が鋭い目つきになり始め、許しを乞い始めた柚羽さん。しまいには手を合わせていた。
まあ、そうなるよね。
星峰さんは、柚羽さんの姿を見て、怖い笑みを浮かべ笑っていた。
女子って怖すぎるー。怒らせないようにしないと。
「まあいいよ。また同じことしたら......分かるよね」
迫力ある友達に怯えている柚羽さん。
「はっはいぃ。もう二度と、一生しません。この場で誓います。琥珀様っ」
勢いよく、頭をさげる柚羽さん。
「じゃあ、またね~。ユズちゃん、また今度ー」
今までとはうってかわって、可愛らしい声で去っていた、柚羽さんの友達。
あわわわと尋常じゃないほど、口をぱくぱくしている柚羽さんにトドメをさす星峰さんだった。
「すっ......涼さ、らくぅーん。一緒に、いて」
か細い声の柚羽さんだった。
このままの柚羽さんを突き放せるような心をもっていないので、星峰さんを説得し、三人で一日を過ごした。
星峰さんとのデートではなくなった。
この後も色々なことがあった。
この話は、またの機会に。番外編の時にあるかも。