夏休み─彼女の姉に挨拶
終業式の翌日。
夏休み初日。
俺は、星峰さんの家に招待されていた。
時刻は10時30分。
リビングのテーブルを囲んで話していた。
出されたマグカップには黒い液体が注がれていた。砂糖をいれてもらったコーヒーだ。
俺は、コーヒーを口に含む。
「涼更君、香と付き合うの大変でしょ。頑固だから、香は」
テーブルを挟んで、正面に座る女性が落ち着いた声で聞いてくる。
ははぁ、と苦笑いを浮かべる俺。
「柚羽姉ってば。頑固じゃないからね、涼更君っ」
隣に座る星峰さんが俺の身体を早く揺する。
「あはははっふっーぷぷぅ、あはあはあははっ。かっかお、あははっは、かおっぷぅあぁぁり」
前に座っている星峰さんのお姉さん、星峰柚羽が腹を抱え笑い続けている。
「もうっ、柚羽姉。笑いすぎぃ、柚羽姉のバカっ!」
居づらすぎる。
綺麗で美しいお姉さんの柚羽さんは最初に挨拶をしたときに落ち着いた声で派手すぎない女性と思っていたのに。一気に変わった柚羽さん。
「はらいたい、はらいたっ腹がぁぁっはぁー。ご、ごめごめん、二人ともぅー」
柚羽さんは、涙で濡れた目を手で擦りながら、謝る。
「俺は良いですよ、謝られることされてませんから」
「いい加減にしてよっ柚羽姉。ふんっ」
星峰さんは、相当気分を害したようでお怒りだった。
星峰さんを宥めるが、俺でもだめだった。
星峰さんはキッチンに向かう。キッチンから顔を出した星峰さんが昼食について声をかけてきた。
「涼更君。今、食料をきらしてたみたいで......冷凍のでいいかな~。失礼だけど、ごめんね。許して」
「大丈夫だから。招かれてる身だから、出されたものなら何でも」
「よくできた優しい彼氏だね。困らせないようにね、香」
柚羽さんが言う。
「涼更君を困らせてないからっ。少し黙ってて、柚羽姉っ」
今まで聞いたことのない冷たく低い声だ。ぶるっと身震いがする。
「はいは~い」
「えっーと、ほしみ......」
「ごめ~ん。涼更く~ん、こんなとこを見せちゃって」
いつもの可愛い声に戻った星峰さん。