お誘い
終業式を終え、担任からの羽目を外しすぎるなよと注告されたLHRも終え、教室は賑わいだす。
嘉納さんが駆け寄ってきて、俺の手首を引っ掴み教室の外へと歩きだしたので、手を引かれたままに従う俺だった。
「強引だったね、ごめん。春休みは暇な日ってある、コウちゃん?」
「謝らなくても。何日かあるかな、暇な日は……毎日デートってわけにもいかないし。夏乃さんは何もない感じなの?」
廊下に出て、並び歩き昇降口へと向かう俺と嘉納。
「そんな感じぃ〜。デートかぁー、コウちゃんとしてみたいなぁ……って、冗談だよー。進級したらおさらばかなぁ私らを取り巻く煩わしいこういうのー」
「どうなんだろう……そこんところ。完全に払拭ってわけにいかないのはわかるけどねぇー。まあ、クラスは変わるんだし、多少はよくなるんじゃない?」
「だといいねぇ。そう言えばさぁ、待ってなくていいの?」
「誘われてないから、誰かと帰ってんじゃないかなぁ〜星峰さん」
「そうなんだ。まだ名前で呼ばないんだね、彼女を」
「二人のときはたまにって感じぃ〜名前呼びは。人前ではちょっと……」
彼女に恋人の呼び方について指摘され、ひとさし指で頬を掻きながら返答した俺だった。
「そんなもんなんだー。でさぁ——」
白けたようなトーンで返し、話題を切り出そうとした彼女の言葉を遮るように、スマホが着信を告げる。
「あっ、ごめん。出ていい?」
「うん。どうぞ」
「ありがとう。もしもしおねぇ——んぱい。どうしたんです?」
彼女にお礼を言い、スマホを手に取って通話に出る俺。
通話の相手は九条先輩だった。
『明日って暇だったりするかな、さぁくん?』
「あっ……はい。空いてます……」
『デートに付き合ってください、涼更くん。◯◯駅で待ち合わせってことでいいかな?』
「……あっ。それって……?」
『その……お願いします。卒業式の後の……続き、じゃないけど……付き合って』
「分かりました。詳しいことは後ほどメールなりで」
通話が切れ、嘉納さんが浮かない面持ちで、「誰からだったの?」と顔を覗かせ、訊いてきた。
「先輩から」
と、端的に返した俺だった。
俺と彼女は寄り道して、ファミレスで昼食を摂り帰宅した。
次は長くなりそうです。