表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/145

思ってたより、怖くなかった

12月に入り、クリスマスが差し迫ったある休日に涼更くんを自宅に招き、ある計画を始めようとしていた私だった。


前日の金曜日に彼が来ることを姉に告げると思惑通りに、気を緩ませ、涼更くんのことにしか頭にないようだった。


姉の柚羽は、部屋を出るときに必ず扉の鍵を閉めていく。

意外と他人を部屋に上がらせないように施錠する用心深さもある。

普段はズボラな姿を見せるが、プライベートな自室に限っては用心深い姉だ。


インターフォンが鳴るや否、玄関に向かって駆け出す姉に呆れてため息が漏れる。

「お邪魔しまぁ──ってぇ、柚羽さん息苦じぃーっ......」

「涼更くん涼更くん涼更くぅ~んっっ、遅すぎて待ちくたびれたよぅ~~んっっ!ねぇねぇ、涼更くんってばぁ~」

玄関では涼更くんを窒息させる勢いで抱き締め続ける姉と、今にも死にそうな掠れた声をあげる彼がいる。


彼が来る度に繰り広げられるお馴染みの展開──光景に、申し訳なさで一杯だよ......私。


彼に姉の相手をしてもらっている間に、姉の部屋に入り、彼女の友人である女性の名前をスマホから見つけ出し、連絡する私。

3コールで通話が繋がり、綴雨葉琥珀の声が流れた。

『もしもしぃ~ユズちゃん。もう機嫌直してくれたんだぁ、早いねぇ......』

「......」

『......おぉーいぃっ。ユズちゃん?あれっ?機嫌直ったから掛けてきてくれたんじゃ......ユズちゃんだよね?ねぇっ、黙ってないで何か言って!』

「......っ!ああっとぉ、かかっ香ですぅっ!妹の香です、いきなりすみませんっ......」

『妹さん?......ああぁ~夏に会ったね、そう言えば。どうしたのかな?妹さん』

記憶力すごい、この人。

「覚えてくれてたんですか?......ウハ、さん。すみませんっ!」

『綴雨葉っていうの。分かりづらいよねぇ~!もしかして、ユズちゃんのこと?そうなるとぉ~暴走してるユズちゃんをどうしたら制御──大人しくさせれるかって辺りかな?』

「まあ、はい......柚羽姉をクリスマスの25日に家から遠ざけたいと思ってまし──」

『うまくいくかは保証できないけど、どうにかしてみるよ。香ちゃんの連絡先を教えてくれないかな?』

「ありがとうございますっ!──です」

『──うんっ。じゃあ、近いうちに詳しく練ろうね。バイバイ、香ちゃん』

返事を返す前にプツッと通話が切れる。


あのときみたいな怖い感じじゃなくて、安堵した私だった。


階段を降りていると、リビングから涼更くんの死にそうな呻き声が漏れ聞こえてきた。


ありがとう、涼更くん......クリスマスのパーティーはうまくいきそうだよ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ