一生を捧げてアナタの笑顔を見守りたい
「あの娘と付き合ってるのかなぁ~って思ってた。あの頃......」
借りてきたDVDの恋愛映画を隣で観てた星峰さんがポツリと呟きながら天井を仰いだ。
あの頃?何のことだ?
彼女が呟いた言葉に疑問が生じ、訊かずにいられなかった俺。
「あの頃?」
「泣き付かれてた彼女。スミちゃんって呼んでた彼女とできてるって思ってた......遠くから眺めることしかできなかった。涼更くんを......」
「......えっ?スミちゃんって呼ん──ええぇ~っ!?星峰さんと同中だったの?あれを見られてたぁ~っっ!?ってことはあの時目が合って逃げて行った女子って星峰さんだったの!」
「やっぱり気付いてなかったんだ......探りもしてこないし、言い出してもこないからそうなのかなぁっとは思ってたけど。存在感なかったから、あの頃......」
「ごめん......気付けなくて。その子が例の幼馴染みなんだよ......付き合うもなにも、恋愛にすら発展しなかったよ。彼女の保護者的なモンだった......」
「あの娘が幼馴染み......その辺りから昨日一緒にいた彼女の裸を見てたんだぁ、複雑だなぁ......」
「いやっそれはっ......彼女から仕掛けてきたのであってぇっ!俺は手を出してないからっ、無実だからぁ~っっ星峰さん!引かないでぇっ見捨てないでぇぇー......」
彼女の裸は見た。見たことに関しては事実で否定はしない。
だがっ!俺はそんな彼女に近付きすらせず身体を震わしながらその場から動けなかった。彼女が唐突に仕掛けてきたもので、いたぶられたのは俺の方だった。
彼女ではなく、俺が被害者だ。
「引いてもないし、見捨てないよ。涼更くんにやっと近付けて、交際まで行けたのに......離すわけないじゃん。涼更くんは他の男子みたいな卑劣なことはしないって分かるから。分かってるから......他人が感じてる痛みに理解し、寄り添おうとしてくれる涼更くんだってこと」
彼女──星峰香には返しても返しきれない恩で溢れかえっている。
彼女に見捨てられる日が訪れるまで彼女に尽くし、一生を捧げようと思った。




