幼馴染みに振られた
「菫のことが好きなんだ。付き合ってください」
二人きりの教室。紅く染まった教室。
窓が開いていてカーテンが靡いている。
目の前の少女の頬に夕陽が差して紅潮しているように見える。
ショートカットの少し癖毛がある顔の小さな少女、三条菫はすぐに答えを出した。
「ごめん。コウ。私には好きな人がいるんだ」
心に刺さる音楽のような声で言う彼女。
鞄が置かれた机に近づき、鞄を肩に提げ、菫を教室に残し、学校を後にする。
振り返ることすら出来ず、ただただ前方に視線を向け、廊下を歩いた。
校舎を出て、通学路を歩いていると大粒の涙が落ちていく。
涙が溢れ、視界が......
幼馴染みの菫との思い出深い公園で自動販売機で缶コーヒーを買い、ベンチに座り、コーヒーを一気に飲み干す。
陽が落ちていき、辺りは暗くなっていく。
幼い頃とは変わった幼馴染み──三条菫の姿に胸にあった何かしらがゲンケイをとどめず、変化していくのを感じた。
手を引かれ、後ろをついてきていた菫が──今はもう友達に囲まれ、楽しそうにしている。
あの頃の彼女は居ないように感じる。幼馴染みという関係が崩れたように感じる。
恋は呆気ないな、と思いながら項垂れた。
とぼとぼと項垂れながら帰宅した俺に、姉は気だるげな声で「おかえりぃー」とスナック菓子を貪りながら言ってきた。
いつもであれば、何かしらアクションを起こすがそんな気力すらなく、自室に一直線だった。
ベッドに寝転がり、瞼が閉じていく。
いつの間にか、就寝していて、日付が変わる前に目覚めてしまう。
制服姿のまま、寝ていたらしいことに気付き、急いで浴室に向かい、シャワーで汗を流した。
食事を摂ることすらせず、寝ていた俺は、階段を下りてリビングで腹を満たし、自室に戻った。
スマホの電源をいれ、時刻は23:25と表示されていた。
中途半端な時刻だな、と思ったが眠り足らないようでベッドに倒れると再び、寝てしまう。