ありふれているげんじつへ。
人を愛することに意味があっても、ここではなんの価値も持たない。
僕らは二人きりで、終わった世界を旅するのだから。
誰も愛さないし、誰とも愛し合えない。
さよなら日常。
深々と降る雪の一つ一つは、まるで花びらのように大きくて、落ちた地面に積もっていく。
僕はその雪を踏みながら歩く。
雪が降っているというのに、スクール水着姿の君は雪だるまを作り始める。
裸足で、水着で、笑顔で作る。
やがて出来た雪だるまの名前は金子だった。
以前の世界で友人だった人の名前らしい。
次に小さい雪だるまを何個も作り始めた。
右から、好美、阿義理、伏見、榎茸、全員知り合いらしい。
ふと、彼女に訊ねられる。
僕には知り合いはいなかったのか?と。
僕は笑顔になりきれない笑いを溢しながら、頭を抱えた。
君だけがいるから、僕はこの世界を創ったんだ。
だから、僕の知っている人は君だけでいい。
僕を知っているのも、君だけでいい。
僕たちは二人で旅をした。
誰もいらない、君だけがいるこの世界で、僕たちは終わらない旅をしたんだ。
雪はやがて雨へと変わり、積もっていた雪を水へと戻していく。
それらはやがて一つの水溜まりになり、自由気ままに泳ぎ出す。
それが跳ねると、風がここぞとばかりにそれを食べて空へと持っていく。
見兼ねてか、次々とそれは跳ね上がる。
その都度風はそれを空へと運んでいく。
やがてそれは雲へと到達して、また雨や雪へと変わるんだと思うと、ほんの少しだけ寂しくなる。
まるで僕たちと同じで、終わることもできずにずっと繰り返しているようだ。
ただ、僕の場合はそれを望んで繰り返してしまっているんだ。