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精霊機甲ネオンナイト 《改訂版》  作者: 場流丹星児
第一部第三章 サードマリア、覚醒
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狂信者VSネオンの騎士

 

 心の中に響き渡った涙の怒号に、マージョリーはハッとして顔を上げた。


「そんな事をして、一体誰が喜ぶの!? 子供達を見なさい!」


 自分の心に響く声に従い、マージョリーが子供達を見ると、子供達は皆、声を枯らして自分を応援していた。


「マージお姉ちゃん、頑張れ~!」

「マージお姉ちゃん、しっかり~!」

「キョウ兄ちゃんのバカ~! マージお姉ちゃんをいじめるな~!」


 男の子達は、アザトースに石を投げつけてマージョリーに加勢していた。


「あ……、ああ……」


 マージョリーはその姿を見て、言葉を失った、目には涙が浮かんでいる。


 声は尚も心に響く。


「アビィちゃんを見なさい! あんな小さな子供が苦しみながら今何を祈っているのか、しっかり聞きなさい!」


 マージョリーがアビィに目を移すと、苦しいはずのアビィが必死に笑顔を浮かべていた。


「わらうかどにはふくきたる、わらうかどにはふくきたる」


 アビィがキョウと初めて出会った時に教わった、祈りの言葉を口にしている。


「きゅうせいのせいじょ、ふたりのマリアさま、どうかわたしのいのちをマージおねえちゃんにあげてください。そして、マージおねえちゃんとキョウおにいちゃんが、いつまでもいっしょにいられますように、どうかおねがいいたします。」


 アビィの祈りの言葉を耳にしたマージョリーの目から、涙が堰を切って流れ出す。


「どうして……、どうしてこんな弱い私なんか……」


 マージョリーの言葉に、鞠川三尉が答える。


「貴方だからよ、弱い所も何もかも。みんな、貴方の全部が大好きだからよ」

「私……、だから……?」

「そう、弱い事は恥じゃないのよ。相沢一尉は、貴方の大好きなキョウは、何て教えてくれたの?」


 諭す様に質問する鞠川三尉に、マージョリーが嗚咽しながら答える。


「自分の弱さを恥じたり卑屈になったりせず、真正面から受け入れる事、そうすれば自分の中から正しい向上心が生まれる。同時に誰かの幸せを願って精進すれば、無限の強さを得る道が拓ける」

「なら、今はどうすれば良いの?」


 鞠川三尉の重ねて問いに、マージョリーは行動で答えた。


「うわぁあああ!!」


 アザトースの繰り出す、黒い仮面舞踏会をかいくぐり、リュミエールをその懐に飛び込ませる。


 この機動に、キョウとイブン・ガジは思わず「見事!」と、同時に唸った。


 黒い仮面舞踏会は、あるがままの自分を受け入れ、虚飾の仮面を脱ぎ捨てた時、それでも戦おうという意志を持ち続けた者に撃ち破る事ができる。マージョリーは鞠川三尉の導きで撃ち破る事に成功した。


 マージョリーは胸部装甲とコクピットハッチを開き、アザトースに向かって飛び出した。

 キョウもアザトースの胸部装甲とコクピットハッチを開き、飛び出してマージョリーを抱き止める。


「ごめんなさい、私が馬鹿だった。キョウ、お願い、アビィを、アビィを助けて」

「よく頑張った、マージ、アビィは任せろ」

「うん」


 キョウはマージョリーを腕に抱いたまま、静かに着地すると、両手で彼女の頬を包み顔をあげさせ

 て、目を覗き込んだ。


「?」


 マージョリーはキョウの行動の訳がわからず、きょとんと目を見開き、その目を見つめ返す。


 キョウは自分の目の奥にいる誰かに、微笑んで優しく語りかけた。


「鞠川三尉、只今の支援誠に見事なり。貴官の献身に全力を以て応えんと誓う、今しばらく安心して待たれよ」


 マージョリーは確信した、自分の心の中に現れ、叱責を飛ばして導いてくれた女性


 鞠川三尉


 こそが、以前キョウが話していた『好きな人』なんだろう。


 マージョリーは 自分の胸に手を当てて、鞠川三尉に心から礼を言った。


「ありがとう」


 しかし、マージョリーのその言葉は鞠川三尉には届いていなかった。


「えへへへへ~、一尉に褒められちゃったぁ~」


 仕方あるまい、先に憧れの相沢一尉に、それもしばらくぶりに直接声をかけられ褒められたのだ。幸せいっぱいの鞠川三尉の心は、ユルユルの笑顔で成層圏に舞い上がり遊んでいた。


 キョウがアビィの元に駆け寄ると、男の子達は皆、罰の悪そうな顔をして俯いていた。

 ディオの親爺が促すと、ラーズが上目遣いでキョウを見上げ、もじもじと謝り出した。


「石を投げてごめんなさい、キョウ兄ちゃん」


 男の子達は、先ほどマージョリーに加勢して、アザトースに石を投げつけた事を謝っていた。


「何だ、そんな事か」


 キョウは笑顔で男の子達を見回すと、両腕を広げて全員を抱き締めた。


「みんな、偉かったぞ。それでこそ男の子だ!」


 キョウに褒められて、男の子達の顔に輝きが戻る。


「キョウ兄ちゃん、アビィを助けてくれよ!」


 ラーズの言葉に、キョウは頷いて答える。


「ああ、任せろ、必ず助ける」


 ラーズは目を輝かせてキョウを見上げた。


「本当だね! 絶対だよ!」

「絶対さ、男の約束だ!」


 キョウとラーズは互いに、大きな拳と小さな拳を合わせて頷き合った。


「さぁ、危ないからみんな下がって。おやっさん、子供達を頼む」

「うむ。さぁ、みんな」


 ディオの親爺が子供達を誘導し、その場を離れた。


 キョウがアーミティッジから庇う様に、アビィを背後に寝かせ、印を組む。


「アビィ、必ず助けるからね」


 優しくアビィに語りかけ、静かに目を閉じて深呼吸をして精神を統一し、カッと目を見開く。


 キョウの足下に、大きな五芒星の魔方陣が刻まれ、光輝く。


 キョウは厳かに、解呪の修法を開始した。

 アビィに降りかかる呪いを撃ち破る為の祝詞を唱える。


高天原(たかあまはら)()し坐して天と地に御働(みはたら)きを(あらわ)(たま)う龍王は

 大宇宙根元の御祖(みおや)御使(みつか)いにして一切を産み一切を育て……」


 しかし、キョウの修法を、指をくわえて見ているアーミティッジではなかった。


「小癪なネオンナイトめ、うぬの思い通りになどさせるか」


 杖を高々と掲げ、呪文と共に降り下ろす。


「フングルイ・ムグルウナフ!」


 禍々しい魔法の矢が、キョウに向かって一直線に放たれる。


 マージョリーを始めとする一同は、キョウならば難なく対処するだろうと見ていたが、その期待は見事に裏切られた。

 何とキョウは為す術無く、アーミティッジの魔法の矢の直撃を受けたのである。


 身体のあちこちから血を吹き出し、よろけながらも歯を食い縛り、足を踏みとどまり耐えるキョウの口からは、血を吐きながらも止まる事無く、祝詞の詠唱が続く。


萬物(よろずのもの)を御支配あらせ給う王神なれば

 一二三四五六七八九十(ひふみよいむなやこと)

 十種(とくさ)御寶(みたから)を己がすがたと変じ給いて

 自在自由に天界地界人界を治め給う

 龍王神なるを尊み敬い……」


 アーミティッジは嗜虐の笑みを浮かべ、舌舐めずりをしながら、呪文を唱えて杖を降り下ろす。


「フングルイ・ムグルウナフ!」


 またしても魔法の矢はキョウに直撃し、深刻なダメージを与えた。


「ぐはぁっ!」


 キョウはよろめきながらも、地面に膝をつく事を拒み、体勢を立て直す。目尻から血を流しながらも、キョウは厳しい目でアーミティッジを見据えていた。


 マージョリー達が、その姿を悲鳴をあげながら見つめている。


「キョウ、何をしているの!?」

「そうですわ! キョウ様ならそんな矢なんて……」


 彼女達の疑問に、キョウの代わりにイブン・ガジが答えた。


「無理なんじゃよ、カワイコちゃん達、この矢はキョウを狙ってではなく、そのちっこい女の子を狙って撃っているんじゃ」


 その言葉に、ハスタァは唖然とした。


「という事は、キョウ殿が避けたり弾いたりしたら……」

「うむ、そのちっこい女の子を狙って飛んで行くだけじゃ」

「何と、汚い!」


 イブン・ガジの言葉に、ハスタァが歯噛みをした。

 キョウはそんな彼等に、力強く宣言する。


「安心しろ、こんな物屁でもねぇ!」


 そして血の混じった唾を吐き捨て、アーミティッジに向かって叫ぶ。


「さそり道人! 貴様の様な腐れ外道は、このネオンナイトが救世の聖女、二人のマリアの名の元に冒涜して、闇と混沌の底に沈めてやる!」


 アーミティッジはキョウをせせら笑う。


「すでに足元が覚束ない貴様に何ができる、たっぷり苦しめて、なぶり殺して差し上げましょう、ほっほっほっほ」


 相容れぬ二人の視線がぶつかり合い、見えない激しい火花が散った。


 キョウは再び祝詞の詠唱を始める。


「眞の六根(むね)一筋に御仕え申すことの由を受け引き給いて

 愚かなる心の数々を戒め給いて

 一切衆生の罪穢れの衣を脱ぎさらしめ給いて

 萬物の病災をも立所に祓い清め給い……」


 アーミティッジが杖を振り上げ、邪法の呪文の力を込めて降り下ろす。


「フングルイ・ムグルウナフ!」


 邪悪な魔法の矢がアビィを狙い、キョウに向かって放たれる。


 それを阻まんと、男が一人走り出した。


「うぉおおおおおおおおっ!」


 矢がキョウに命中する直前、強力な筋肉に鎧われた巨体が盾となった。


「ぐわぁあああああっ!」

「ノーデンス! 」


 キョウは魔法の矢の直撃を受け、片膝を地に着いたノーデンスに声をかける。


「大丈夫だ、ネオンナイト。俺に構うな、それよりも解呪を急げ」


 ノーデンスの無事を確認し、頼もしげに微笑んで詠唱を再開する。


「萬世界も御親のもとに治めしせめ給へと

 祈願奉ることの由をきこしめし

 六根の内に念じ申す大願を成就なさしめ給へと

 恐み恐み白す」


 祝詞の詠唱を終えたキョウは、両手で組んだ印で素早く九字を切る。


「ふん!」


 キョウが仕上げに気合いを入れると、魔方陣から清らかな光の柱が天を貫く様に立ち上がり、光のシャワーをアビィに注いだ。


「うーん、うーん……」


 しかし、アビィは相変わらず苦しそうに呻き声をあげている。


「ダメか! ? ならば……」

「待て、キョウ。もしかしたら、呪いじゃ無いかもしれんぞ」


 次の解呪の祝詞を唱えようとしたキョウを、イブン・ガジが止めた。


「呪いじゃ無い? いや、有り得るな」


 キョウがイブン・ガジの言葉に頷く。


「キョウ、儂を使え!」


 イブン・ガジの申し出に、キョウは目を丸くして尋ねる。


「儂を使えって……、どういう事だ?」


 じれったそうに、イブン・ガジはキョウを急かす。


「ええい、何をしとる! 瓶ごと放ればいい! 早くするんじゃ!」

「分かった」


 キョウは言われるままに、アビィに向けてイブン・ガジの入った瓶を投げると、空中で瓶の蓋が開き、イブン・ガジの粉が霧の様にアビィの周りを漂った。


「分かったぞ、キョウ! ショゴスじゃ! ショゴスが寄生しちょる!」


 人工奉仕精霊ショゴス


 新しきものクラスの精霊機甲が開発された時、擬似契約させる低級精霊として同時に開発された精霊である。

 使役されるのを目的に開発された為、妖精体は不定形の アメーバ の様な形で顕現し、目的に応じて様々な形態に擬態する特徴を持つ。


 イブン・ガジはこのショゴスがアビィに寄生している事を突き止め、キョウに報告した。


「ショゴスだって!?」

「ああ、そうじゃ、これを見ろ」


 イブン・ガジが言うと、アビィの足首から侵入し、神経を侵しながら脊髄へと向かうショゴスの群体を可視化させる。


 イブン・ガジは不可視の物を見たり、可視化させる事が出来る様だ。


 ショゴスの侵食が進むにつれ、アビィに浮かぶ苦悶の表情が深刻化していく。


「ほっほっほっほ、どうやら気づいた様ですね。さよう、その子にはショゴスを寄生させました、ショゴスはやがて神経から脊髄を通り道に喰らいながら進み、最後には脳へと到達して喰らい尽くすでしょう」

「いたいけな幼女に何と言う恐ろしい事を! 先ほどの卑劣な魔法攻撃と言い、あなたには白騎士教団の枢機卿としての誇りは無いのですか! アーミティッジ枢機卿!」


 ハスタァの怒りの抗議を鼻で笑いながら、アーミティッジは恐ろしい持論を展開する。


「これも全てマリア病克服の為、その高貴な行いを理解出来ぬとは何と愚かな。ショゴスが神経、脊髄、脳を喰らい尽くした後、それらに擬態すれば、それまでの記憶を引き継いで、更に本来の寿命を越えて生きる事は私のタクヒで証明済み。後はそれが人間で可能かどうか証明するだけ。栄えある証明の献体に選ばれた事を、感謝されこそすれ、恨まれるとは筋が違うと言う物です」


 そう言って、侮蔑のため息をついた。


「そんなの、克服だなんて言えないわ!」


 マージョリーが敢然と反論する。


「そんなのはただ肉が生きてるだけ、殺された上に偽物の心を持たされた肉人形になるなんて、まっぴら御免よ!」

「うぬらの意思などハナから論外よ、何しろショゴスは奉仕精霊。この実験が成功すれば、うぬらの肉は従順なダッチワイフとなる。たっぷり教団の役に立ってもらうぞ、ほっほっほっほ」

「許さない!」


 下卑た笑いを浮かべるアーミティッジを、唇を噛みしめマージョリーが睨みつけた。


「狂信者め」


 全ての不快感をこの一言に込め、キョウは不毛な平行線の続く議論に終止符を打ち、苦しむアビィの傍らに座り込み、その額に右手を優しく添えた。

 そして左手で印を組み、アビィに取り憑いた邪を祓うための祝詞の詠唱を開始する。


「高天原に神留座す 神魯伎神魯美の詔以て

 皇御祖神伊邪那岐大神」


 キョウの新たな祝詞の詠唱を、侮蔑の眼差しで見下ろしたアーミティッジは、杖に魔力を込めて振り上げた。


「どんなに足掻いても無駄だと言うのに、愚かなりネオンナイト。フングルイ・ムグルウナフ!」


 邪悪な魔法の矢を放つ。


「させるか! アーミティッジ!」


 キョウとアビィを守る為、ハスタァが我が身を盾として矢を受けた。


「背教者め」

「背教者は貴様だ! アーミティッジ! 我等が帰依する二人のマリアは、この様な所業を許さない!」


 忌々しそうに愚痴るアーミティッジに、血だらけになりながらも、ハスタァは凛とした誇りを胸に決別の反論を叩きつけた。


 キョウは、この場の全ての者の期待に応えるべく、全魔力を込めて祝詞の詠唱を続ける。


「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に

 御禊祓へ給ひし時に生座る祓戸の大神達」


 キョウの右手から、眩しい光と共に破邪の波動がアビィの中に送り込まれる。

 アビィの口から、波動に耐えられなくなったショゴスが吐き出され始めた。


 その間も絶え間なく続くアーミティッジの魔法攻撃を、ハスタァとノーデンスが満身創痍になりながら、その身を盾として受け止め続ける。

 崩れ落ちそうになる二人を、アンナとアリシアが治癒魔法で支える


「ノーデンスさん、しっかり!」

「ハスタァ僧正、頑張って!」


 二人の声援と治癒魔法を受け、ハスタァとノーデンスは気力を充実させた。


 キョウの祝詞も佳境に入る。


「アビゲイル・マテウス・ラスティーニに取り憑きし、諸々の禍事罪穢れを拂ひ賜へ清め賜へと申す事の由を、天津神国津神、八百萬の神達共に聞食せと恐み恐み申す」


 咳き込みながら、アビィがショゴスを吐き出した。


「やったぞ、キョウ! ショゴスを全部追い出したぞ!」


 イブン・ガジが狂喜してキョウに報告する。


 その報告を受けたキョウは、両手で印を組み直して九字を切る


「禁!」


 キョウが力強く唱えると、吐き出されたショゴスが全て爆砕して燃え尽きた。


 皆の顔に安堵の表情が浮かんだ、子供達の歓声があがる。同時に安心して気の抜けたハスタァとノーデンスが、がっくりと膝を着き、肩を組んで笑い合う。


 この光景を蒼白な表情で、目尻を痙攣させながらアーミティッジは見つめていた。


「おのれぇ~! おのれ! おのれ! おのれ! ネオンナイト!」


 歯噛みして悔しがるアーミティッジは、自身の崇高な実験を粉砕した張本人、憎きネオンナイトを物凄い形相で睨みつける。


「許さん、許さんぞ! ネオンナイト!」


 アーミティッジが、怒りと憎しみを魔力に込めて呪文を唱え始めた。

 それを察知したキョウも、迎え撃つ呪文の詠唱を開始する。


「フングルイ・フングルイ・フングルイ・ムグルウナフ!」

「北方重金属を司る金剛石の王よ、吾に利有らば急急と律令の如く盟約を果たせ!」

「死ねぇい! ネオンナイト!」

獣破魑じゅうはちきゅうとせよ!」


 やや早く詠唱を終えたアーミティッジが、杖を降り下ろし、巨大な魔法の矢をキョウめがけて放つ。

 少し遅れてキョウが詠唱を終えると、矢を遮る様に、中空に巨大な呪符が描かれた。

 呪符は魔法の矢を押し戻し、アーミティッジに向かい飛んで行く。そして呪符はアーミティッジを押し包み、背後の岩に押し付ける。


「おのれぇ~! ネオンナイトォ~!」


 アーミティッジは断末魔の声をあげ、顔の皮を残して押し潰された。ビヤーキー隊の面々が、一人残されたウォーランに厳しい目を向け、ジリジリと追い詰めていく。


 狂信者の敗北にこの場の誰もが安堵して、キョウに駆け寄り勝利を讃える。しかしマージョリーの悲鳴にも似た言葉が、一同の安堵感を根底からかき消してしまった。


「アビィ、ねぇアビィ、起きて、アビィ! キョウ、アビィが、アビィが起きないの! アビィ、お願い目を覚まして! アビィ」


 マージョリーの悲痛な叫びに、その場の誰もが耳を疑い、凍り付く様に立ち尽くした。


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