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短編集 ~お題で500文字小説~ 改訂版

お題:鏡②

作者: 三原 やん

冒険者に宝を持ち去られた後らしく、本当に何も残っていないようなダンジョンだった。

少なくとも、表向きはそうなっていた。


気になったものといえば、不自然な行き止まりの壁ぐらいだ。

そこに到達した時、このダンジョンに冒険者が何度もリトライする理由を知る。


向こうが空間かどうかを確かめようと壁を叩いた時、ソイツは現れたのだ。


「ちぃ…っ」


同じ姿、同じ速さ、同じ魔法。

間違いなくソイツは俺だった。


声が聞こえる。


『私はミラー。勝つ事は無いが、負ける事は決して無い。何故なら私は、お前自身なのだから。』


ミラー…つまり鏡。

ソイツが現れると、その通路が幻であったかのように開けた部屋に変わる。

俺が距離を詰めれば、相手も詰めてくる。引けば相手も引く。

俺と同じ姿、同じ動きで、同じ威力の俺の攻撃を全て防いだ。


「確かに…負けた事は無いみたいだな。だがつまりは、この先の宝は残っているという事だ!」


俺は確信した。

そいつから離れて壁際まで後退すると、空間が歪んで、普通の通路に戻る。

なるほど、二度と出られないなんて事は無く、再チャレンジも可能なのか。


「そして、お前は古代の遺物。俺の魔力量は常人をはるかに上回り、回復速度もある。

戦闘中でもじわじわ回復し、1晩眠れば完全に回復できるが、お前にはそれができない。」


相手が同じ魔法で対抗してくるのを利用し、毎日そこに足を運んでは魔力が尽きる程に魔法を放ちまくった。

燃費と回復速度には自信がある。向こうも回復する手段はあるだろうが、俺に追いつく程だろうか?


1ヶ月かけて何度も足繁く通った末、“ミラー”を破ると、壁が崩壊し、新たな通路が現れた。

その先には、未だ冒険者が触れた事の無い領域が待ち構えていたのだった。






「…それが、夏休みの宿題が全くできていない理由か?」


姉が微笑む。

その顔は天使のようでもあり、俺には悪魔のようにも見える。


ヤバい……。殺 さ れ る 。


この姉、俺の代わりに勇者をやってくれたらいいのにと思うほど、強く、厳しく、容赦が無い。


ええ、約束しましたね。毎日、ちゃんと宿題しますと。

だから、冒険に行かせてくれと。


実際には、帰ったら魔力回復の為に「ぐーすかぴー」ですよ。

いや、仕方なかったんだ。そうじゃなきゃ、とてもじゃないけど休み明けまでに攻略なんか・・・。

ひっ、言い訳ですとも!わかってます。約束を破りました。ごめんなさい!


俺は恐怖のあまり、ダンジョンの最深部で手に入れたお宝の鏡を落とし、割ってしまったのだった。






title:鏡 ~未知との遭遇~

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