くずかごの中の手紙
悪役令嬢は旦那様を痩せさせたい 2巻発売記念の短編です。
手紙形式。一話一話が短いです。
親愛なるお姉さまへ
お久しぶりです、お姉さま。テレーゼです。あなたのかわいい妹のテレーゼです。
お元気にしていますか? あれからもう三か月。まだまだ王都はお姉さまの話でもちきりです。
どんな気分でお過ごしでしょう。きっと気持ちよかったでしょう。だって、あれから、なにもかもひっくり返ってしまったんですもの。
稀代の悪女から、悲劇を乗り越えた運命の乙女! きっと笑いが止まらないことでしょう。今ごろ沼地で楽しくお過ごしかしら。あの醜いカエル男と、仲良くしていらっしゃるのかしら。あんなに結婚を嫌がっていたのに、顔が良ければそれだけで受け入れられるなんて、さすがはお姉さまですわ。過去のことなんてあっさり忘れてしまえるんですもの。わたしのことだって、きっと忘れて、
親愛なるお姉さまへ
お姉さま、わたしです。テレーゼです。覚えていらっしゃいますか?
いいえ、もう覚える価値もないのでしょうね、お姉さまには。
たった一人の本当の妹を、いなかったものとして過ごしているのでしょう。お姉さまはそうやって生きていけるんですものね。家族よりも、他人を選ぶ人ですもの。自分が薄情だってことさえ知らないまま、なにも間違っていないような顔で幸せになるのでしょうね。
きっとわたしのことも、この先思い出すことさえないまま、
親愛なるお姉さま
今、ノイマン家とシュトルム家がどういう状況だかご存知ですか?
お姉さまがいなくなって、
お姉さま、少しくらいはわたしたちのこと、
親愛なる お姉さま
今なにをしていますか
どうお過ごしですか
わたしのことを思い出すことはありますか
お姉さま
お姉さま、どうしてあのとき
どうしてこうなって
お姉さま、どうして傍にいてくれないのですか
わたし一人で、どうやって生きていけばいいのですか
お姉さま、わたしどうすればいいの どうすればいいかわからないの
お姉さま
親愛なるお姉さま
助けて、お姉さま