5.5-1 テレーゼからの手紙
親愛なるお姉さまへ。
カミラお姉さま、ご機嫌いかがでしょうか。あなたのテレーゼです。何度もお手紙を出しているのにお返事がいただけていないので、心配しております。
お体に障りはありませんか? お元気で暮らしていますか? 困ったことはありませんか? お姉さまの様子がわからなくて、私は不安でしかたがありません。
まさか、沼地に浸かりすぎて居心地がよくなってしまった、なんてことはありませんよね? ヒキガエルの妻となったきり、家族も忘れ、手紙も返さないなんて、あまりに薄情すぎるもの。
ああ、いえ、お姉さまならそのくらい、平気でなされるかもしれません。だって、お姉さまが家族を捨てるのは、これがはじめてではありませんものね。
でも、私はお姉さまとは違うわ。
だからきちんと、警告して差し上げます。
これから、お姉さまに危機が訪れます。お姉さま一人の力では、どうにもならないことですわ。いつもみたいにわがままを叫んでも、人に当たり散らしても、誰もお姉さまを守ってはくださりません。お父さまやお母さまだって、お姉さまの味方なんてなさらない。みんながみんな、お姉さまの敵になりますでしょう。
でも、私だけは違います。お姉さまが私を妹と呼んで、私の手を取るのであれば、私はお姉さまだけは助けて差し上げます。
だって、家族ですもの。苦しいときに助け合うのが、本当の家族というものでしょう?
私はリーゼロッテさんと親しいから、お姉さまを守って差し上げられます。
かつて、私の手を振り払ったお姉さま。
お姉さまが頼る手は、もうここにしかありません。
そのことを、覚えておいてくださいませ。
あなたのかわいい妹 テレーゼより