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-転生奇譚- リンカネーションストーリー  作者: 彼岸花
第三章:冒険者の兄妹
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第三十三話:仮面の女冒険者

 (ジャック&アンリエッタサイド)

 

 「今日も特に情報はナシ、かぁ~」

 「ええ、冒険者の昇格の情報も新規で此処に来る冒険者もナシ、ですわね」


 ジャックとアンリエッタは今日もギルドで新規迷宮と冒険者の情報を集めていた。

 もうかれこれ三月の間、依頼を請ける時以外はいつもギルドに入り浸っている。

 アンリエッタは少々のエールを、ジャックは葡萄酒を煽りながらギルドの酒場で毎日チェックを繰り返す。

 

 「こりゃ、不毛かねぇ…」


 ジャックは重心を後ろに、椅子を傾けながら背を伸ばす。

 黒尽くめのフード付きローブを来た冒険者がギルドに訪れている。顔には口元以外を隠す仮面を着けており、表情は見えない。身体つきからして女か。

 

 「見ねぇ顔だなぁ…」


 ジャックはさらに葡萄酒を煽る。


 「やめなさいな、行儀が悪いですわ、ジャック」


 だがジャックは聞いていない。ジャックの視線は黒尽くめの方を向いている。


 「あらいらっしゃい、冒険者の方かしらぁ?それとも依頼…いや、冒険者の方ねぇ?」


 ギルドマスターが普段通りの調子で応対する。

 冒険者の黒尽くめは懐から古びた徽章を取り出し、ギルドマスターに見せる。

 

 「あらぁ、この街のギルドは初めてかしらぁ?」

 

 ギルドマスターがこの地での新参の冒険者と認め、話を進める。


 「ええ、もう十五年程、前になりますが、マクシミリアン帝国で冒険者をしておりました、古い徽章ですが問題はありませんか?」


 黒尽くめの女冒険者は丁寧な口調でギルドマスターに確認を取る。ギルドマスターも特に気にせず「問題ないわぁ」と平常運転だ。

 しかし、酒場の奥から見ていたジャックは徽章に気付く。


 くすんではいるが金の地金に赤の玉石。A+ランクの冒険者だ。それもベテランの。十年以上のブランクが有るとは言え、元がA+の冒険者ならば低く見積もってもA-前後の実力はあるだろう。僥倖だ。勧誘できれば十分な戦力になる。ジャックは気が付くとバランスを崩し、椅子ごと後ろに倒れていた。


 「ギャハハハ、何やってんだジャック!もう歳かぁ!?」

 「るせぇ!まだ四十三だ!十分現役だよ!」

 「済みません、皆さん、騒々しい男でして…」


 アンリエッタが周囲に謝る中、ジャックは飲み仲間の冒険者と言い合いをしていた。


 「おいおいジャックゥ!そんなんでちゃんとエルダの冒険者の超新人(スーパールーキー)のパーティーが務まんのかァ?」

 「ギャハハハハ!そうだそうだァ!お前とアンリエッタはセオとクリスちゃんの保護者見てぇなモンなんだからよ!いざってときにコロっと逝くんじゃねえぞ!」

 「誰が保護者だァチンピラ共!」


 ジャックは未だに罵り合っている。アンリエッタは匙を投げた様子だ。これがここ暫くのギルドの酒場の日常だ。

 しかし、黒尽くめの女は今まで酒場の喧騒に全く無関心だったがその会話で初めて反応する。

 反応を見せた黒尽くめの女冒険者に酔っぱらいが絡みだす。


 「おう、姉ちゃん!こいつな!今この街のギルドの超新人とパーティー組んでてよ!今度は迷宮に挑戦するって言ってんだ!俺ァやめとけって言ってんだがどうにも頑なでよォ」


 酔っ払いが絡みだすが黒尽くめの女は酔っ払いには目もくれず、ジャックに詰め寄った。


 「その…超新人の名前、もう一度聞かせてもらっても…!?」


 急接近する女にジャックが慌てる。いい香りだ。それに身体つきもなかなか。アンリエッタよりは背が低いが出る所は出ているなんともグラマラスなボディだ。目深にかぶったフードと顔を覆う仮面の隙間からは亜麻色の長い毛束を覗かせている。


 「お、おう…二人いて一人はセオドア、もう一人はクリスティンってんだ…。俺とそこの女、んでセオとクリスでパーティーを組んでてよ…」


 年甲斐もなくジャックは女の色香と仮面の奥の視線に唾を飲み、ただでさえ酒で赤くした顔をさらに赤くさせた。


 「なーに鼻の下を伸ばしているのかしら、ジャック。それよりも待ちに待ったA級の冒険者ですわよ」


 慌てるジャックに対してアンリエッタは冷静だ。女同士故、特に慌てる様子もない。

 アンリエッタの一言でジャックも落ち着きを取り戻す。が、仮面の女は更にジャックに詰め寄り、落ち着きを取り戻した筈のジャックは先程以上に顔を赤くさせていた。


 「もう少し、お話を聞かせて貰っていいかしら?」


 仮面の女がジャックの横に付き、回りの飲んだくれ達は場が白けたようでつまらなさそうな顔で次々とギルドを後にしていく。気がつけばギルドの酒場にはジャックとアンリエッタ、そして仮面の女冒険者だけになっていた。


 少し沈黙した後、ジャックが話を切り出す。

 

 「実は近いうちに迷宮の探索を計画しててな、そこでパーティーとして参加する冒険者を募ってんだ」

 

 女は「迷宮」という単語に微かに反応をするがそれ以外は静かにただ黙って聞いている。


 「今のパーティーは前衛が二人、後衛が一人、俺は斥候とサポートだ。前衛がもう一人、後衛も一人は最低限欲しい。そこでアンタが現れたって訳だ。どうだい?」

 「貴女は見たところ前衛…ですわね?」


 ジャックが現状を女に話し、反応を伺う。アンリエッタは見透かしたかのように女に問い質す。


 「お察しの通り、私は前衛です。得物は剣と短剣。十年程のブランクはありますが…多少お役に立てるかと。もしよろしければ残りのお二人に会わせて頂いても?」


 ジャックが感じた彼女の反応はかなりの手応えアリ、と言った所か。アンリエッタもジャックを見て頷く。


 「よし、じゃあ二人が戻ってくる場所に案内する。アンタ名前は?」

 「アリシア…アリシア・エイトワルージュ」

 「アリシアだな、じゃあ付いてきてくれ」

 

 ---


 (セオドア&クリスティンサイド)

 流石に戻るのが早すぎたか、まだ昼を過ぎたばかりだ。恐らくジャックとアンリエッタはギルドか。俺達もギルドに行ってもいいが、少し腹も減った、最近は外食かジャックに食事を用意してもらうばかりだったので久しぶりに自分達で食事をすることにした。


 キッチンとなる場所にはクリスが魔術を使って作ったお手製の冷蔵庫があり、野菜や果実などはそこに保管している。冷蔵庫、と言っても木箱の内部を氷で覆っただけの簡単なものだが。この世界にも乾麺はあった。勿論、うどんやラーメンのようなものは無いが、パスタと全く同じ麺料理は存在する。とは言っても前世の物と近しいパスタはあるが若干違うようだが。

 普段こういう場合はクリスが料理をしているが今回は敢えて俺が腕を振るう事にした。作るのはペペロンチーノだ。

 まずは材料の下拵え。水を入れた鍋を火にかけ沸騰させる。塩は入れない。

 次に具の準備だ。ガーリックはあるが、唐辛子はこの世界にはないが似たような辛さと形状をしたタカの実だ。タカの実の中の種を抜き、それらを輪切りにスライスしていく。同時に鍋が沸騰し始めたようだ。今回使うパスタは細い乾麺だ。乾麺を湯に投入し、その間に別の鍋に薄く油をひき、先程のガーリックを弱火で油で揚げるように炒める。直ぐに火が通り始めるのですかさずタカの実を投入だ。ガーリックがきつね色になったら一旦別の皿に取り上げてパスタの茹で汁を投入し火から外す。しばらくするとソースが白濁してくるのでそうなったらソースの完成だ。

 ソースが完成するのを待つ内に麺がほぐれきる辺りか。パスタを一本取り、茹で加減を確認する。うん、アルデンテだ。

 パスタを鍋から上げ水を切る。パスタの水気を切ったらガーリックとタカの実の鍋に移し、引き続き炒める。パスタから水気が取れれば完成だ。


 クリスの腹から音が聞こえる。ガーリックの芳ばしい香りがクリスの空腹感を更に加速させたようだ。

 クリスは今か、今かと椅子に座りソワソワとしている。最後に黒パンとチーズを皿に載せテーブルに置く。ガーリックの芳醇な香りがテーブルの周辺を包む。俺達の昼食が今、始まる。


 早速クリスは俺の作ったペペロンチーノをフォークで一口分を巻き上げ口に運ぶ。…さぁどうだ…!

 クリスはそのまま二口、三口とフォークを進める。

 クリスがパスタを胃へ送り込み遂に口を開いた。


 「兄様がこんなに料理が上手だったなんて…!」


 簡単なパスタだが口に合ったようだ。俺も安心し、パスタを食べ始める。うん、中々。

 

 俺とクリスは直ぐに昼食を平らげてしまった。もう少し作っておいても良かったかも知れない。

 昼食を終えると、クリスが「昼食は兄様でしたので私は片付けを」と片付け全てを担ってくれた。その間俺はソファーに横になっていた。

 片付けを終えたクリスは魔導書を片手に先程アーリアル伯から受け取った翻訳を携えて読み始め直ぐに感嘆した。


 「凄い…解る…全部解る…!兄様!」


 俺もクリスの隣に移動し一緒になって読むがアーリアル伯の翻訳はとても分かりやすく纏められていた。そう、魔力のコントロールの仕方が俺でもイメージしやすく使える気が起きる程に。だが、恐らく俺はこの大魔術を扱えるとしてもほぼ使う機会は無いだろう。それこそ奥の手として、か。

 俺はクリスに比べると魔力総量は圧倒的に少ない。と言っても十数発の中級魔術を連発しても差し支えは無いが。

 それでもこの大魔術は一発放てばクリスも魔力欠乏を引き起こす一歩手前程度には魔力を消費する。俺の場合は足りないかギリギリ一発放てるかと言ったところだろう。放てなければいいが、放ってしまえばたちまち魔力欠乏でその後はまともに動くことすら儘ならないだろう。前衛の俺が倒れては全く意味がないのだ。


 そうしている内にジャック達が屋敷に戻ってきた。見知らぬ黒尽くめの仮面の冒険者を連れて。

 戻ってきたジャックが開口一番、朗報を告げる。

 

 「お、戻ってきてたのか。漸く見つけたぜ、五人目だ」

 「…アリシアです。宜しくお願い致します…。」


 黒尽くめの女冒険者が自己紹介をする。少し遠慮するかのように。

第三章最終話です!先日プロットを整理した結果、まだまだお話は序盤…。RPGで言うと最初のダンジョンに挑むくらいかって所ですね。

まだまだ完結までの道程は遠いですが今後も更新頑張りますので応援宜しくお願い致します。


新たな仲間と共に迷宮探索へ乗り出すセオドア一行!その果てに待つのは…!?

次章!第四章は迷宮探索編!お楽しみに!

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