文書:セオドアのメモ①
この世界は現実世界に無い物や生物が多い、重要そうな事柄をメモしておく事にしよう。
*剣術
この世界に剣術と言う概念はあるが、流派と言うものは存在しない。但し、師弟関係のようなものはあり、勿論、師匠は弟子に自分の剣を教えると言うシステムについては現実世界とは同じのようだ。
剣術以外の戦闘技術については他に魔術、槍術、斧術、短剣術、弓術、爪術などが存在するらしい。
*魔術
この世界には魔法があり、一般的には魔術と呼ばれる。
魔術には規模や消費する魔力量によって初級、中級、上級に分けられる。基本的に詠唱は不要らしく、敢えて詠唱するのはイメージを具現化し易くする為と考えている。
実際に詠唱して魔術を使う人が無詠唱で魔術を使うと感覚が掴みにくいらしく、失敗しやすいようだ。
属性は炎、氷、水、風、雷、土、光、闇、無の9つらしいがガスターの話によると世間で知られているのがこの9つであり、実際はもう少しあるらしい。
ガスターの話では魔術と言う物はイメージ次第で無限の可能性があり、基本的な9つの属性はエネルギーをイメージするものだから簡単なのだと言う。そしてイメージさえできれば天候を操ったり時間を捻じ曲げたりもできるそうだが、それには相応の魔力量と物事を成り立ちからイメージする必要があるらしく、いわゆる大魔術なるものに当たるらしい、と言っても大魔術のうち攻撃に使うようなものはエネルギーを一気に大量放出するようなものらしく、魔力量さえクリアすれば習得は容易とのこと。
余談だが、9つの属性に含まない魔術のうち一つだけ簡単なものがあり、自分自身の時の進みを早くしたり遅くしたりするものがあるそうだが、前者は前者は通常よりも早く動ける代わりに寿命を縮め、後者は通常より遅くしか動けない代わりに寿命を伸ばすらしい。
既に故人ではあるらしいがかつて大賢者と呼ばれた人族の男がこれで200年程生きたという話だ。
*時間・季節の概念
時間の概念はちゃんと存在していた。現実世界と同じく24時間刻みらしいが分の単位はなく、また表現方法も異なる。
現実世界では午前と午後で分けられていたが此方の世界では現実世界の6時から18時までが『陽の刻』、18時から6時までが『陰の刻』と呼ばれ、例えば10時ならば「陽の四刻」と言った感じで呼ぶ。
時間を確認するのは人工魔道具の刻陽石か、魔術を扱える場合は刻陽石(つまり時計)をイメージするだけだ。故に魔術を使える人間は基本的に時間にきっちりしている事が多い。
また、月と言う単位もなく存在するのは春夏秋冬の季節で、季節は元の世界と同じように90日程度で移り変わる。、誕生日と言うのも季節単位となる。つまり春に生まれた人間は季節が一巡りしてまた春になれば一つ歳を取ると言う事になる。
あとは地球とは違い、地域による気候差はあるものの、季節や場所によって日照時間が異なる、なんてこともない様だ。
*通信手段について
この世界の通信手段については殆どが手紙らしい。手紙以外には狼煙なんかが一般的だ。一応別に魔力石版と言うものがあるらしく、石版に書いたものがそのまま遠方の石版に写し出される、というFAXのようなものだが、此方は別の位置にある魔力石版の場所を具体的に覚えておく必要があり、また量産はほぼできてない為、一部の王族や貴族、あるいは豪商などのごく少数が持っているに過ぎない。
あと値段はアルフレッド曰く、「そりゃあ目ん玉飛び出る」程の額らしい。
*お金の概念
この世界には勿論お金の概念がある。大抵はブリュンヒルデ王国貨幣で通用するが一部の辺境の国では使えないらしい。
他の国のレートはどうかわからないがこの国では基本的にじゃがいもが10個で銅貨1枚と言う基準で合うらしい。 銅貨が十枚で銀貨が一枚、銀貨が十枚で金貨一枚、金貨が十枚で白金貨一枚、白金貨十枚で聖銀貨一枚、聖銀貨十枚で王金貨一枚、王金貨十枚で帝金貨一枚となっている。
ちなみに下級騎士の就任初季の給料が金貨5枚だそうだ。以前俺とクリスの模擬戦の時に銀貨1枚を賭けていたそうだが、日当でいえば一日分程度(といっても初任給ではないだろうからもっと貰っているだろう)の金額を賭けていたようだ。ろくでもない父親である。
*この世界の生物
この世界において、簡潔に言えば大きく分けて人間・植物・魔物の3つだけで構成される。
人間は人族、獣人族、魔族、竜人族、海人族に別れ、人族以外はそこからさらに種という分類がある。
ちなみにエルフ・ドワーフ・ハーフリング・ハーフエルフは魔族に分類されるらしく、例えばハーフリング種なら『魔族ハーフリング種』と言った感じで、魔物で例えばゴブリンであれば『亜人種ゴブリン』、と言った風になる。
生まれてくる子供が親の両方の特徴を持つことは髪の色以外ではないらしく、たとえば人族と魔族の親ならば子供は人族か魔族のどちらか、ということになる。
ただし一部の例外があり、人族とエルフ種が親の場合に限ってはハーフエルフ種が生まれる可能性がある。ちなみに親がハーフエルフ種同士の場合はハーフエルフ種限定だ。あとはハーフエルフ種とエルフ種の場合は人は25%、ハーフエルフが25%、エルフが50%、人族とハーフエルフ種ならその逆、という感じになるらしい。
この世界のハーフエルフ族は前の世界のファンタジーの世界のように忌み嫌われているというわけでもなく、「エルフ族程じゃないが長寿でエルフ族より腕力があり、人間族より器用」、というだけの種族のようだ。
*魔石と魔力結晶
この世界には魔石と魔力結晶というものがある。どちらも一見似ている上、単なる宝石とは殆ど見分けがつかない。
魔石は魔術の力を発揮する石、魔力結晶は魔法陣や魔石に魔力を供給する電池のようなもので、身につけている場合は魔力の増幅器としての役割も持つ便利な石だ。電池利用としては使用回数に限りのある充電池のようなものらしく、使う度に容量が徐々に減るのも電池と同じだ。
ちなみにクリスの持っている指輪には魔法陣のレリーフとその中央に魔力結晶が埋め込まれているようで、魔力結晶も使い切った魔力結晶を再利用したもので、それほど高度なものではないが、魔術のコントロールや魔力のチャージ時間短縮、そして魔力の消費量の軽減に一役買っているらしい。ただクリス曰く、「この指輪を着けている方の手で魔力を溜めると溜めた魔力の量によって指輪が光るので、わかる人間にはどの属性のどのレベルの魔術かがすぐバレる」らしい。一概にメリットばかりというわけでもなさそうだ。




