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第二話 前世


少女が生まれたのは貴族の家だった。


貴族とは言っても、五等爵の一番下の男爵家で名ばかりの貴族だった。そして、暮らし向きは平民と何ら遜色ないようなものだった。

もともとは、少女の祖父が戦時中に活躍したことによって賜った爵位だった。父はもちろん二人いる兄も、そして少女も剣術を習っていた。


女でありながら五歳から剣術を習っていた少女は、才能があったようでめきめきと腕を上達していった。

幸か不幸かそれは、たった二年で五歳と六歳年上の兄どころか父をも越えるものだった。



初めは天才だと喜んでいた父と兄二人も、少女が強くなっていくにつれて、段々と少女の存在を(いと)うようになっていった。

それに対して、ただ強いだけの普通の少女には何故自分が避けられているのか分からずに、ただ強くなれば誉めてもらえると信じ続けて強くなっていった。

そして、当然のように少女の父と兄二人は、少女のことをさらに避けるようになった。


ただ、少女の母は心優しく穏やかな性格で、少女のことを変わらず接し、愛し続けた。

やがて、少女にとって母は唯一の心を許せる存在になっていた。




少女が剣術を始めて五年後、その頃には父と兄二人が自分を避ける理由が理解出来るようになっていた。

その為、少女も無理に近づこうとはせず、自分のペースで父と兄二人とは違う生活を送ることとなっていた。

朝は早くに起きて体力づくりのために走り、そして剣術の特訓をしていた。



そんな日々を送っていたある日、少女の母が不治の(やまい)にかかってしまった。


日に日に痩せていく母を見る少女はどんな気持ちだったのだろうか。

「お母さま、早く元気になって」


そうは言ったものの、母の命が長くないことは少女の目から見ても明らかだった。

そしてそれから数日後に亡くなった。最後に母は、少女一言残して逝ったそうだ。


「幸せになりなさい、シルフィア」


それは、母以外に呼ばなくなっていた少女の名前だった。



唯一の心のよりどころだった母を失った少女は、まるでその隙間埋めるかのように今まで以上に剣術に身を打ち込むようになった。

それだけが少女の空白の心を埋めていた。


他に何を望むでもなく、ただそれだけがを毎日繰り返し、まるで機械のように行っていた。

そして、それは皮肉な事に少女を強くしていった。



そんな日々を送っていたある日、少女は彼に出会った。

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