第九話 「殲滅戦(一)」
再びスコットの手の中でアサルトライフルが火を噴いた。
ネルソンの動きは目を見張るものがあったが、複数のオーガー相手に回避に専念しているようだった。
その中の一匹のオーガーが銃弾を受けて倒れる。するとネルソンは反撃し、たちまち三匹のオーガーの首を刎ね飛ばした。
もう立っている化け物はいない。
「よぉ、大丈夫か?」
スコットはネルソンのもとに駆け付けて言った。
「……帰ったと思ったが」
「分かったんだよ。夢みたいだが、これも現実だってな。化け物の危機にさらされている人々がいる。戦う理由も見付けた」
咆哮が上がり新手のオーガー達が姿を見せた。消火活動をしたいのはやまやまだが、まずはこの化け物どもを掃討する方が先だ。それに、村人には不幸だが、消火したところでもう既に殆どの家屋は原型を留めていなかった。
人々が声を上げる。別の方角からもオーガーが姿を見せた。
「こっちは俺に任せろ!」
スコットはいち早く引き金を振り絞った。
弾丸の群れがオーガーの身体に突き刺さってゆく。しかしオーガーは怒りの咆哮を上げて猛進してきた。
「ちっ、どんだけタフなんだ!?」
「任せて良いんだな?」
ネルソンの問いにスコットはニヤリと微笑んで頷いた。
「行けよ」
ネルソンが駆け出して離脱してゆくのを尻目に、スコットは距離の縮まったオーガーの攻撃を避けるべく引き金から手を放した。
猛烈な風と共に斧が軌跡を残して目の前を過ぎってゆく。
スコットはそれを避けた。だが、敵の攻撃は止むところを知らなかった。
凶刃がこちらの魂を掠め取ろうと目の前を何度も何度も横切った。スコットはネルソンのことを思い出していた。俺もあれだけ剣を、いや、ナイフを使えれば良いんだがな。悔しいが奴は達人だ。俺が見て来たどんな人間よりも刃物の扱いにも、戦いにも慣れている。
後方に素早くステップし、距離を開いたところでアサルトライフルを連射した。
首から血を噴き上げオーガーが倒れる。だが、まだ敵はいた。スコットは思った。アサルトライフルでは敵の急所を続けざまに撃たない限り致命傷を与えることはできない。皮膚が、筋肉が固いのだ。
ならばと、半ば嬉々としてハンドガンを取り出した。大型のそれは猛獣の固い皮膚や骨格を突き破るほどの威力のある弾丸を使用する。傭兵仲間から誕生日に贈られたものだった。
弾がフル装填されているのを確認し、スライドを引いて、突進してくる化け物に狙いを合わせた。
こいつの威力を試すにはまたとないチャンスだ。
スコットは左手を添えて銃の反動に身構えた。
化け物が斧を振り上げ距離を詰めて来る。
今だ!
スコットは引き金を引いた。
強烈な音を響かせ、手の中で銃が大きく震えた。
一発。それが怪物の顔面に突き刺さり、進撃を止める。
もう一発、頭部を目掛けて撃った。
すると怪物の頭が弾け飛び、血と脳漿が飛散した。
こいつは大した威力だ。ちょっとした大砲をぶっ放した気分だぜ。
アンタに神の祝福を!
スコットはプレゼントの主に感謝したのだった。




