第八話 「戦線復帰」
化け物の咆哮がスコットを現実に引き戻した。
燃えて崩れ落ちる家屋の中から影が迫ってくるのが見えた。
「スコットさん」
エレンがアサルトライフルを差し出す。スコットはまだ呆然としていた。
嗚咽が聴こえる。そして中身をさらけ出した怪物の亡骸を見る。スコットは尋ねた。
「アンタは何で俺をここに連れて来たんだ?」
エレンは答えた。
「あなたが私が召喚できる中でも高い成績を誇る勇者だからです」
「駄目だ。夢物語にしか思えない」
「そうですか……。でも、そう思って頂いても結構です。ただ、あなたの役目は怪物を倒し、人々を救うことなのです。それが今のあなたに与えられた神からの使命なのです」
怪物達がその姿を現した。
「もう良い」
ネルソンが言った。怪物に鋭い眼光を向けつつ彼は言葉を続けた。
「こいつの世界と、この世界は現実離れし過ぎてるのだろう。あとは俺がやる。神よ、犬死する前にそいつを戻してやれ」
ネルソンは血の滴る剣を引っ提げ怪物達へと歩んでゆく。そして一気に距離を縮めた。目を見張るその動きは、気付いた時には怪物の首が宙へと飛んでいた。ネルソンは新たな敵へと攻撃を仕掛けた。その様子を離れたところでスコットは見詰めていた。
「わかりました」
エレンが言った。
「スコットさん、あなたをあなたの世界へ帰して差し上げます」
その時だった。
民衆の悲鳴上がり、新たなオーガーが後方より現れた。
オーガーが斧を振り上げる。その下には地面に尻餅を着いた子供の姿があった。
スコットは思い出す。アーマーベストの傷は本物だった。そして怪物の中身に人はいない。
これは映画じゃない!
「いけない!」
エレンが声を上げた時、スコットは彼女からライフルを奪い取り、怪物の頭へ狙いを定めて引き金を振り絞った。
銃が躍動する。薬莢が飛ぶ。断続的な派手な音が木霊する。
怪物の顔には正確に幾つもの穴が開いた。
スコットは撃ちながら駆け出し、咆哮を上げていた。
無心になって撃ち続けていると、ついに怪物が断末魔の声を上げて倒れた。
程なくして人々は歓声を上げた。
タフだったな。弾薬を結構消費した。
スコットは自分が意外にも冷静であることに驚いていた。
スコットは怪物の亡骸を見詰めた後、背後を振り返った。
ネルソンが複数の怪物と渡り合っている。
「出遅れちまったな……。加勢するぜ!」
スコットは駆け出した。




