第六十五話 「戦い」
人々の力闘する声が響き渡る。だが、それに対して怪物は雄叫びでも上げる気配は見せなかった。ただ鼻息を荒くし、無言のまま戦い、そして人を殺し、あるいは死んでゆく。遺伝子には戦うことのみが刻まれているのだろうとスコットは思った。
その戦闘狂の怪物達もまたサラフィーという神のために、この世界に導かれてきたのだろう。彼らはこの世界で生きていけるのだろうか。いや、こうして人と対峙し、命を散らせている。この世界では生きられないということだ。
だから解放してやるのだ。呪われた憐れな運命の楔から。
スコットは敵の一撃を潜って避け、マグナムの弾を入れ替え、素早く反撃に移る。三発放った。
敵の胸に当たるが当然ダメージは通らなかった。
右手からエレンのライフルが襲うが、怪物は振り返って建物を一刀両断にした。エレンは屋根から地面に飛び退いて避けていた。
「スコットさん、狙って!」
エレンの声が響いた。
スコットは狙いを定めて引き金を引いた。
弾丸は敵の右肩を粉砕した。
続いて左肘を撃った。
ミノタウロスの腕がダラリと垂れ下がる。
と、ネルソンが影を残して敵の懐に飛び込み、敵の腹部を剣で貫く。そして屈み込んだところを剣が素早く踊り、首を跳ねた。血煙が吹き上がりミノタウロスの身体は血の池の中に沈んだ。
「エレン大丈夫か?」
スコットは一息吐いて女神を振り返った。
エレンは建物の廃墟に片手を当てて右足を上げていた。
「すみません、着地したときに捻ったみたいです」
「分かった。お前は離脱しろ」
スコットが言うとエレンは食い下がるかと思ったが素直に聞き分けて頷いた。
「すみません、後をお任せします」
「任せとけ。ネルソン、エレンを頼む」
影が動いてエレンを抱え上げた。
ネルソンの血塗れの姿は地獄の悪鬼の様だった。可憐なエレンを抱くその姿はどうにも不釣り合いだった。
スコットは二人を見送る間もなく、戦場に飛び込んだ。
衛兵が、村の男達が集団で大きな敵を相手にしていたが、どうにも相手に通用する必殺の一撃というものを持ち合わせていないようだった。
スコットはマグナムを連射し、敵の関節という関節を破壊した。
ガクリと地面に落ち、無力化したミノタウロスに向かって戦う男達は苦労しながらその首を跳ねていた。
俺が率先してやらねばな。スコットは戦場を駆けたのだった。




