第六十四話 「第九ステージへ」
スコットの腕の中で三度マグナムが震えた。
三発の弾丸は怪物の胸に命中したが、相手は歩みを止めず襲い掛かってくる。
両腕で握られた長柄の大斧が振り上げられ、分厚い風の音を纏って振り下ろされる。
その斬撃は遅く、スコットは悠々と避けることができたが、油断はできなかった。そう思っている間にも続けざまに空を薙いだ一撃は先程と違い高速だった。反応が遅ければスコットの首は胴から離れていただろう。
新たに訪れた村は戦場と化していた。
サイクロプスほどではないが、大きく筋骨が隆々の二足歩行の牛の頭を持った化け物が、両腕に長柄の斧を一本握り締め闊歩し、村人達を襲い、家屋を破壊していた。
「ミノタウロスです!」
エレンが素早くそう言った。
ミノタウロスはうじゃうじゃいた。非戦闘員は速やかに村外に脱出し、救援に駆け付けた衛兵や村の男達が敵を排除しようと命を懸けていた。
剣が、槍が、弓矢が、唸りを上げてそこら中で風の音を巻き上げていた。しかし、敵の屈強な身体にはなかなか傷をつけられずにいた。
そして次第に乱戦となり、スコットは無我夢中で引き金を引き続けていたのだった。
ミノタウロスが斧を振り回す。衛兵の一人が剣を圧し折られ唖然としている。スコットは素早く彼を押し倒し、銃を構えた。
すると右手の方角から銃の音が響き、怪物は目を押さえた。
すかさず影が割り込み、敵の巨体を剣が貫いた。
怪物は血の中に倒れた。
「エレン」
右手の建物の屋根にライフルを構えた彼女の姿があった。そして怪物を突き殺したのはネルソンだった。
乱戦の最中で離れ離れになってしまったと思ったが、どうやら二人は側にいたらしい。
「見事な連携でしたね」
スコットが庇った衛兵が立ち上がりそう言った。
「なるべくチームを組んで戦った方が良いぜ」
スコットがそう助言すると衛兵は頷き戦場の中へ飛び込んで行った。
「わりぃな、二人とも、今回ばかりは助かった」
スコットが礼を述べるとエレンが親指を立てて微笑んだ。ネルソンもこちらを振り返っていたが、顔も身体もまるで負傷したかのように血みどろだった。彼は不愛想に頷いた。そして言った。
「お前の武器は強力だが、今回の相手には正面から挑んでも殆ど無力だ」
「ごもっともです」
スコットは苦笑しながら応じた。
「ならば女神の様に部位を狙え。関節なら痛手も通るだろう。敵を無力化しろ」
「わかった、そうする。とどめは任せるぜ」
スコットが手を振り上げるとネルソンも同じようにした。そして二人は手を叩き合わせたのだった。




