第六十二話 「墓標」
分かっていたのだ。俺が考えていた筋書きと何も変わらなかったじゃないか。
いや、違う。俺が死んでジョージーを守り切れなかったのではなく、ジョージーが死を目前にした俺を命を捨てて庇ってくれた。
スコットはジョージーの亡骸を見下ろした。涙は無かった。意外にも冷静なものだった。ジョージーの亡骸をどう供養してやるべきか、彼は思案していた。
墓穴を掘るか。だが道具も無しにどうやって?
「スコットさん」
名を呼ばれ振り返ると離れたところにエレンが立っていた。彼女はスコップを二つ持っていた。
「よぉ、エレン」
スコットは彼女に対して恨む心が爆発するかと思ったが、その気にはなれなかった。
「ちょうどいい、それ貸してくれ。こいつの墓穴を掘ってやらなきゃならねぇ」
「手伝います」
「物好きだな」
スコットは笑った。だがエレンは笑い返さなかった。
スコットは森の中に入り、開けたところにスコップを差し込んだ。
エレンも後に続いて少し離れたところで作業を始めた。
しばし無言だった。居心地が良いわけでも悪いわけでも無かった。
「ネルソンは?」
スコットは尋ねた。
「村にいます」
「またヤスリで剣を磨いてるのかな」
スコットが応じるとエレンが手を止めてこちらに向き直った。
そして身を震わせて涙を零して言った。
「スコットさん、ごめんなさい。私は神なのになんの力にもなれなくて」
一瞬、スコットは鋭い怒りを感じた。今更後出しジャンケンじゃないか。だが、怒りはフッと収まった。
スコットはジョージーのことを思い出し応じた。
「アンタを恨んじゃいない。ジョージーは死ぬべきだったんだ。……遅かれ早かれ人と衝突してたろう。ジョージーはどの道この世界では平和に生きられなかった。これで良かったんだ」
するとエレンが声を上げて泣き崩れた。
スコットは彼女に近寄り屈んでその頭を撫でながら思った。今回の件で一番苦しい思いをしたのはエレンだったのではないかと。彼女は非情な神ではない。優しく勇気があり射撃が上手くて洗濯好きな女神だ。
「エレン、悪かったな。お前に銃を向けちまって」
スコットは素直にそう謝罪した。
土が固く木の根にも阻まれ墓穴を掘るのは一日がかりだった。途中に昼食など挟まなかった。
二人がかりでグリフォンの遺体を穴に入れる。
それが終わると、エレンが死者を送る唄を詠み始めた。威厳のある声だった。その声に耳を傾けた後、墓を埋め戻した。
岩を転がして来て墓場の中央に置き、その周りを小さな石で囲んだ。全てが片付いた時は夜だった。
「終わったな。お疲れ」
「お疲れ様です、スコットさん」
エレンの調子も以前の彼女に戻っているようだった。スコットはそこだけ安堵した。ギスギスした関係を引き摺りながら旅はしたくない。
「なぁ、エレン」
「何ですか?」
「俺は最後までお前についてくぜ」
グリフォンのジョージーとの短い思い出を胸にスコットは改めてそう決意したのだった。




