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第六十話 「猶予(四)」

 森へ帰りつつも、スコットは人々がここを特定しないか不安だった。ただでさえ、林道が設けられている。つまりここは人の手が加わっているということだ。そのうち木こりか猟師かが偶然やってくることも考えられる。その結果、ジョージーは見つかり、村は大騒ぎになり討伐隊を結成する。

 だが、と、スコットは頭を振った。ジョージーの命はあと二日だ。そうなるまい。

 森へ戻るとスコットはジョージーに突き刺さった二本の矢を引き抜いた。グリフォンは悲鳴を上げなかった。

 それにしても、今後は放牧地の警戒も一層厳しくなるだろう。

 ジョージーが甘えて来た。

 スコットはその首を撫でた。

 朝食を取った。干物の肉をジョージーが興味深げに見ていた。そして我慢できなくなったのか、声を上げた。そして口を開いて待っている。その口に肉を放り込んでやった。

 ジョージーは一呑みすると再びねだって来た。

 スコットは笑いながらもう一度肉を分けてやった。

 ジョージーと戯れ、その日は終わった。



 二


 あと一日。

 ジョージーはスコットを起こし、再び放牧地帯へ飛んで行った。

 スコットは内心不安だった。放牧地帯の警備は厳重になっているかもしれない。

 しかし、放牧地は広いため全てのエリアまで人手が回らなかった。その朝はジョージーが牛一頭をまるまる平らげても邪魔は入らなかった。

 スコットは安堵し、ジョージーの背に乗り、二人は森へ戻った。

 そしていつも通り、遊んだ。木切れを空へ投げたり、撫でてやったり、一緒に昼寝をしたりした。

 しかし、時間は無情にも進んでゆき、いよいよ最後の日を刻んだ。スコットはよく眠れず、ジョージーの身体に身を預けながらどうすればネルソンに勝てるだろうかと考えていた。だが、ネルソンに勝つということはおそらく彼を殺すということだ。そんなことができるのか。

 いや、杞憂だろう。十中八九負けるのは自分なのだから。そしてネルソンに殺される覚悟はあるのか自問自答する。背中越しにジョージーの息遣いを感じる。だが、スコットは以前ほど強硬な姿勢にはなれなかった。何故ならジョージーが無事だとしても、彼の餌となる肉は放牧地にしかない。そしていつかは村の者に見つかり、真っ向から対峙することになる。ジョージーが威嚇したことを思い出す。村人との戦いは避けきれないだろう。そして人々に犠牲も出るかもしれない。死ななくて良いはずの人間が、ジョージーというイレギュラーな存在のためにその運命を変えられてしまう。そしてジョージー自身も遅かれ早かれ殺されるだろう。

 スコットは溜息を吐いた。考えることがいっぱいで眠れない。そう思ったが、結局、翌日もジョージーに起こされたのだった。

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