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第六話 「異形の者達」

「おおっ!」

 森を抜けて現れた光景にスコットは思わず驚きの声を上げていた。

 家屋が見えるがそれらが火に包まれている。そして逃げ惑う人々の姿もあった。

「なかなか本格的だな」

 スコットが言うと、村の方から人々が数人駆け付けて来た。

「た、助けてくれ! 化け物が、化け物が!」

 その迫真の演技にスコットは称賛を送りたい気分になった。

「分かっています。後はお任せください」

 エレンが答える。

 すると燃え上がる村の中から聴いたことの無い野獣のような咆哮が木霊した。

 スコットは多少動揺し感心した。

「行きますよ」

 エレンが言い、スコットとネルソンは後に続いた。

 燃え上がる家屋の間を進んで行くと、ヨロリと、大きな影が姿を現した。

 炎がその身体を照らし出す。筋肉質の腕と脚は多少毛むくじゃらだった。そしてその顔を見てスコットは軽く驚いた。

 大きく裂けた牙のはみ出た口に、瞳の無い怒れる両眼、そして顔を覆うたてがみ。

 素晴らしいメイクだ。すっかりモンスターそのものである。

「オーガーです! お二人ともお願いします!」

 オーガーと呼ばれた化け物が先程聴いた咆哮を上げ、片手に握っている斧を振り下ろしてきた。

 凄まじい風圧を伴った一撃だった。

「こいつはきっとアカデミー賞の何とか賞を狙えるかもな」

 スコットが攻撃を避けて言った時だった。一陣の風が吹いたかと思った時に怪物の首が空へ舞い上がっていた。

 血煙を上げて胴体が崩れ落ちた。ネルソンが剣を手にして立っていた。

「何てこった、最近の映画はここまで本格的なんだな。この血といい……」

 スコットは血に触れた。それは生温かかった。――いくら映画とはいえ、こんな細部までこだわるのか?

 その時、近くで女の悲鳴が上がった。

「行きましょう!」

 エレンが言い、ネルソンと共に駆けて行く。スコットも後に続いた。

 井戸があった。そこは村の広場なのだろう。多くの村人の姿がある一方、それと比例するように複数のオーガーの姿があった。

 村人の一団は男達を先頭にし、怪物と対峙していた。と、言っても、持っている武器は農具や包丁などであった。

 ネルソンが駆けた。その速度は尋常ならざるものだった。これほど速く移動できるものなのだろうかというほどの踏み込みであった。

 剣がまたオーガーの頭を分断した。

 村人達から歓声があった。オーガー達が振り返り、ネルソンに狙いを切り替えた。

 ネルソンはきっと元スポーツ選手なのだろう。素晴らしい動作と演技だった。

「スコットさん!」

 エレンが声を上げた。

「何だ?」

 振り返った先には斧を手にしたオーガーの姿があった。

 スコットは不敵に微笑んだ。

「どれ、そろそろ俺の活躍も見せなきゃ映画にはならないよな」

 今の台詞はカットだろうか。と、思いつつも、アサルトライフルを地面に置いた。

「え? 何やってるんですかスコットさん!」

「何って? こいつは本物の銃なんだ。いくら勘違いしそうな迫真の演技だったからって役者を撃ち殺す訳にはいかねぇだろう」

「役者? あなたは、まだそんなことを言ってるんですか!」

 エレンが声を上げた。

「これは現実です! その怪物も本物です!」

「はいはい、そういう意気込みでやれってんだろう。おっと、お互い今の台詞は不味かったか?」

 スコットは張り切って微笑み怪物と向き合った。

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