第五十九話 「猶予(三)」
固いものに肩をつつかれスコットは目を覚ました。
目の前にはグリフォンが居た。
「おはよう、ジョージー」
そう言いながら、エレンやネルソンと半ば決別したことが嘘じゃないことを思い知ったのだった。
ジョージーは切れ長のまなじりにあるつぶらな瞳でこちらを見詰めると、身を伏せた。
スコットはまさかと思い、ジョージーの背に跨った。
するとジョージーは身を起こし、翼を羽ばたかせた。
スコットは落ちぬ様にジョージーの首に抱き付いた。
ジョージーはグングン飛翔し、地上から離れてゆく。
何処へ行くんだろうか。やがて空高く舞い上がったジョージーは街道の方、目掛けて飛んでいったのだった。
二
遥か真下に村が見える。
エレン達はきっとここに滞在しているのだろう。まさかここで降りるのかとスコットは居心地の悪さを覚えたが、グリフォンは更に先へ先へと進んだ。
やがて開けた草原に出た。いや、動物の影がそこら中にあった。どうやらここは放牧地帯のようだった。
ジョージーは一声上げると滑空し降下した。
スコットはまさかと思った。
そのまさかだった。
ジョージーは一頭の牛に狙いを定めるとその身体に襲い掛かった。
牛が悲鳴を上げる。スコットは地面に下りた。
ジョージーは横倒しになり抵抗する牛を嘴で容赦なくつつき、猛禽の鋭い爪の生えそろった四肢でその身体を引き裂いていった。
スコットは思い知った。ジョージーだって腹が減る。しかし、その標的が、野生の動物ではなく、人の手によって管理されている場所を狙うとは。おそらくジョージーは常習犯だ。こうやって日々を生きて来たに違いない。
牛は四肢を半ばからもぎ取られ、首から血を噴出して動かなくなった。ジョージーはその新鮮な肉を夢中になって啄んでいた。
このジョージーがもしも人を襲ったらどうなるだろうか。エレンの言葉を思い出す。神の筋書きを覆し、死ななくても良い命が失われる。
「こ、この化け物め!」
男の声がし、スコットが振り返ると、弓矢を構えた数人の人間がこちらに近付いてきて来た。
「ジョージー、まずい、逃げるぞ」
スコットはグリフォンにそう訴えた。ジョージーは顔を上げた。
そして人々に向かって威嚇するように高らかなに嘶いた。
「おい、人がいるぞ!」
スコットの姿に気付いたらしく人々が声を上げた。
「お前がこの化け物をけしかけたのか!?」
「ジョージー、頼む、逃げるぞ」
スコットはジョージーの背に飛び乗り、祈る思いでそう囁いた。ここで人間達と対峙してしまえば、それこそ取り返しのつかない事件になる。そしてスコットにも疑いがかかるだろう。彼は決別した二人の世話にはなりたくないとも内心思っていた。
するとグリフォンはようやく翼を羽ばたかせ飛翔したのだった。
矢が数本放たれた。
「ジョージー、森へ帰るぞ!」
スコットが言うとグリフォンは一鳴きし飛び去ったのだった。




