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第五十八話 「猶予(二)」

 なれる。大丈夫さ、俺はこいつと友達になれる。

 少年の前には黒い雑種犬がいた。首輪をしてないことから野良犬だと彼は考えた。

 黒い犬はつぶらな瞳を警戒させる様子もなく、まるでこちらを滑稽そうに、不思議そうに見ていた。

「怖くない、俺はお前に何もしない。だからおいでジョージー」

 スコットは中腰になり、黒い犬を呼んだ。

 犬は躊躇いがちに一歩進み出ると、後は早かった。スコットの前まで来るとお座りした。

「よし、良い子だなジョージー」

 スコットはポケットからビスケットを取り出すと犬に分け与えた。ジョージーはたちまちそれを胃に収めるともっと無いのかとこちらを見詰めて来た。

 ジョージーとはその後八年の付き合いだった。八年後、この元気なジョージーがまさか癌になろうとはスコット少年は思いもしなかった。



 二



 グリフォンが鳴いた。スコットはその身体を撫でた。

 三日後か。

 スコットはネルソンの言葉を思い出し、そして泣き腫らしたエレンの顔を思い浮かべた。

 悪いのは俺なのだろうか。

 だが、このジョージーに罪はない。ジョージーは無理やりこの世界に連れてこられて、あるいは生み出されてしまったのだから。

 三日……俺ではネルソンには勝てないだろう。無論ジョージーは知る由もないが、つまりその命はあと三日しか保障されないのだ。

 だったらこの三日ジョージーには良い思いをしてもらいたい。

 ジョージーは仰向けに寝っ転がり腹を見せた。

「ハハッ、こいつめ」

 彼は考えを振り払いジョージーのお腹を撫でた。グリフォンは甘える様にピーピーと鳴いて身体を左右に揺らした。

 スコットはジョージーと戯れた。

 木の枝を空へ放り投げジョージーがそれをクチバシで捉えて戻ってくる。ジョージーはそれが楽しいらしく何度もせがんできた。

 そしてやがて夜になると一人と一匹は身を寄せ合って眠りについた。身体にジョージーの息遣いと体温を感じる。ジョージーは生きている。それもあと三日の命だ。この一瞬を大事にしたい。彼はそう思い、心地良い眠りについたのだった。

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