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第五十四話 「村の戦い(三)」

 敵は命知らずで勢いはあるが、戦士という点では技量が圧倒的に不足していた。

 スコットは次々急所を切り裂いて一方的に賊を葬った。

 だが、技量不足なのは村人達も同じだった。命知らずな分だけ賊に軍配が傾きそうだったが、村人達も命懸けだった。なので何処も彼処も接戦が展開されていたが、その中で一際奮闘していたのは村長だった。

 村長は灰色の髪を振り乱し、大刀を振るって力戦していた。足元には斃された賊の亡骸が十近くあった。

 そんな奮闘する村長をひっそりと弓矢で狙う賊達がいた。

「危ないっ!」

 スコットが声を上げた時、その賊達は突然倒れた。

 スコットが屋根を見上げると、エレンがライフルを構えていた。

 良い腕前だ。親指を立てて称賛すると、彼女も同様の返事をし、すぐに戦いに戻った。

「あなた方は不思議な武器をお持ちですな」

 村長がこちらを見て言った。あれだけの力闘をし、年齢も年齢だというのに息一つ乱していなかった。

「まぁな」

 スコットは多くを語らずそう返事をした。まさか自分達が異界から来たと言っても信じてはもらえないだろう。

 村長に狙いを絞ったのか、新手がこちらへ殺到してくる。

 だが十人程の賊は次々とエレンのライフル弾に倒れたのだった。

「上だ! 屋根の上に射手がいるぞ!」

 エレンに気付いた賊達が弓矢を構え彼女に狙いをつけようとした。

 スコットはすかさずマグナムに持ち替え、素早い動作で連射しそれらを掃討した。

 硬直していた戦場の空気が変わりつつあるのをスコットは感じた。村長も同様のようだった。こちら側が敵を圧倒していた。おそらくはエレンの手柄だろう。

「よし、皆、今だ! このまま押し込んでしまえ!」

 村長が声を上げると、村人達が鬨の声を上げて残りの盗賊に向かって行った。

 だが、盗賊達も逃げはしなかった。後ろを振り返り怯える様にして、半ば捨て鉢になって村人の波に飛び込んできた。

 命懸け同士の競り合いが再び始まろうとしたが、スコットとエレンの銃が次々敵を屠り、またそれに励まされた村人達が村長を先頭に敵に斬り込んでいった。

 かくして賊の掃討は終わった。そう思った。村人の間からスコットが知らぬ間に未だに続いていたある一進一退の攻防が繰り広げられているところを見るまでは。

 ネルソンと盗賊王リレイガスが互角の戦いをしていた。

 空気を唸らせ、船の帆の様な巨大な刃が振り下ろされる。ネルソンが身を躱すが、凶刃はその姿に見合わぬほど高速で動き、ネルソンを追い詰めようとしていた。

 巨大な刃が分厚い風を纏う音が幾つも聴こえた。

 ネルソンは紙一重で全てを避け続け、敵の懐に飛び込もうとしたが阻まれる。

 敵の刃が空を切り、側の建物の壁を次々打ち壊した。

 スコットはその膂力に驚愕した。

 盗賊王の一方的な攻撃が始まった。

 ネルソンは後退に後退を重ねた。

 家屋を打ち壊し、盗賊王は突き進んでゆく。

 村人達も巻き込まれぬ様に慌てて退避し、戦いの様子を見守っている。

 だが、スコットはいつでも撃てるようにマグナムで狙いを定めていた。それでもたぶん引き金は引かないだろう。この戦いはある意味神聖なものに思われた。誰も手出しの許されない名誉ある一騎射ちだ。例え結果が最悪なものになってしまってもネルソンの戦いを汚すわけにはいかない。そう感じていた。

 それにネルソンならやるはずだ。スコットは信じていた。

 不敵に笑い刃を振るう敵の前に回避の姿勢だったネルソンが突如一変した。素早い動作で避けながら腰から短剣を抜き、敵目掛けて投擲する。

 それを盗賊王は巨大な刃で受けた。

 だが、誰もが驚いた。そこに既にネルソンの姿が無かったからだ。

 彼の身体は敵の懐にあった。

「やるな」

 盗賊王が口元を歪ませてそう言った。

 陽光が剣を煌めかせると同時に敵の首が飛んだ。

 血煙が立ち上り、巨体が力を失い倒れる。

 しばしの後、歓声が広がった。

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