第四十八話 「邪悪なる像(三)」
ネルソンの強弓から矢が放たれた。
それは上空を舞うガーゴイルの翼を打ち砕いた。
「翼を狙え。身体程の強度は無い」
ネルソンがそう告げ、スコットも勇躍して敵の両翼それぞれにマグナムを連発させた。
ガーゴイルは避けるという概念が無いのか、その全てを受けた。そしてボロボロになった翼では空中を浮遊することもできず、失速しながら落ちて来た。
よし、ここからだ。
スコットはマグナムを構えた。
ガーゴイルが口を開いた。
すると灼熱の炎が眼前に広がった。
スコットとネルソンは転がって避けた。しかし、炎は後を続いてくる。
「スコット伏せろ!」
ネルソンが珍しく声を上げた。
尊敬する戦士の声にスコットは反射的に身を地面に横たえた。するとその真上ギリギリのところを魔術と思われる黄色の刃が通過していった。
「ちっ、炎に魔法に器用なことを」
スコットは愚痴りつつ横に回転して立ち上がる。炎はネルソンを追っていた。
その無防備な邪悪なる像の頭に向かってスコットはマグナムを撃ち続けた。
猛獣の固い皮膚と厚い肉、そして頑強な骨をも貫く銃だ。その威力はやはり凄まじく、数発目で石像の頭を割った。
「やった!」
これで終わった。そう思ったが顔の半分を失い炎が止んだだけだった。
石像はまるで何事も無かったかのようにこちらを振り返り、腕を振るう。
魔術の刃が飛んでくる。スコットは横っ飛びで避ける。そして敵の腕目掛けて引き金を引いた。
二発、それが限界だった。敵の刃が放たれる。避ける。
ふと、ネルソンの姿がどこにも無いことにスコットは気付いた。
まさか、逃げたか?
いや、と思い直した。退くべく時には退くだろうが、まだそこまで追い詰められてはいない。それにネルソンは不愛想ではあるが一人逃亡するほど肝も小さくなく、情の無い男ではない。何か作戦があるのだろう。
スコットは、ならばと囮役になり切ることにした。
銃を撃ち、敵の意識をこちらに釘付けにする。魔術の刃が飛んでくる。それを避け応戦する。だが狙いは右腕一本にしている。先程の頭の様に弾丸を受け続ければ割れると踏んだからだ。
予想通り右腕が吹き飛んだ。よし、後は左腕をやれば無力化できる。
不意に視界に影が割り込んだ。
ネルソンが大上段にツルハシを振り上げ、敵に振り下ろした。
大きな衝撃の音が響いた。
ネルソンの背中越しに見えた。邪悪なる石像の首元から真下に向かって大きな亀裂が入っていた。
だが、石像は動いた。左腕を振り上げネルソンのツルハシと打ち合った。
「スコット、もう数発で奴は崩れる!」
ネルソンが声を上げる。
「了解だ!」
ネルソンが退く。スコットは石像の裂け目に狙いをつけて銃弾を放った。それらは全て石像に突き刺さった。
執拗に動く石像だったが、その途中で左右に縦に分かれて倒れた。
「やったか!?」
スコットはネルソンに合流し石像を見た。もはや石像は動かなかった。
「活動停止を確認」
スコットはそう言うと、安堵の息を吐いたのだった。




