第四十六話 「邪悪なる像(一)」
ハーピィの群れはもう現れなかった。だが、神の機器の反応は山の上へ進む度、大きくなってくる。
これまでの経験上、更に大きな存在が持ち受けているだろうとスコットは思った。
「それにしても十人も討伐隊の方はいたのに、どうして勝てなかったのでしょうか」
エレンが誰ともなく尋ねた。
「飛び道具の有無だな」
スコットは応じた。犠牲となった討伐隊の側に弓が一つもなかったのだ。
「地上で奴らをやろうとするなら一気に数羽も相手どらなきゃならないだろう。それだと完全に敵のペースだ。その一方、俺達が持つ飛び道具は敵にとっては常に奇襲そのものの効果を発揮した。しかも一撃で落とせる。その違いだろうな」
霊山を登り、ようやく山頂へ辿り着いた。
そこは見晴らしも良かったが、あいにく景色を楽しんでる場合ではなかった。
エレンを先頭に神の機器の示す敵を探さなければならない。
趣のある神殿がそこには作られ、入り口には人では無い姿をした巨象が設置されていた。
少し離れたところに古びたツルハシが落ちているのをスコットは見た。誰かの忘れ物だろうか。
神の機器の点の羅列された矢印が大きくなっている。
神殿の中へ恐る恐る入って行ったが、祭壇があるだけだった。
「おかしいですね」
エレンが言った。
「この神殿に実は隠された地下室があるとか?」
スコットが問うとエレンが応じた。
「そうかもしれませんね。わざわざ地下室を開いて敵を開放するようなことにはなりますが、イレギュラーな存在は斃さねばなりません」
「よし、手分けして探そうぜ」
三人は散って神殿の中を探り始めた。
が、結局仕掛けらしい仕掛けは見つからず夜を迎えてしまった。
「夜は不利だな。敵の近くだが、ここで朝までやり過ごした方が賢明じゃないのか?」
スコットが問うとエレンもネルソンも賛成した。
そして保存食で腹を満たし、三人はそれぞれ交代で見張りに立った。
何事も無く夜が明けた。
見張りだったスコットは欠伸をしながら神殿の外に出て朝日を見ていた。
隣に像がある。台座の上に背に翼を生やした凶暴な顔をした巨像が乗っているのだ。
スコットはその脚を叩いた。固い石でできていた。
「しかし、生きてるみたいに迫力があるな。神殿の守護者ってところか?」
エレンとネルソンが起きて外へ出て来た。イレギュラー発見装置は電子音を上げ、点字の大きな矢印を明滅させた。
「やっぱりこの近くにいるんですよねぇ……」
エレンが途方に暮れたように言った時、ネルソンが剣を抜いた。
鋭い眼光がスコットに投げかけられたかと思ったが、戦士は後ろにある巨像を睨み付けていた。
その時、スコットのすぐ側で咆哮が上がった。




