第四十四話 「第六ステージへ」
「これは、無論、アルヴィナがよこした」
彼には珍しく道々ネルソンが語り始めた。
「アルヴィナは俺達の使命に理解を示した」
ネルソンとアルヴィナが会ったとすれば、スコットとエレンを酒場に残して出掛けたあの日だろう。野暮なことは尋ねないが、二人はどうやら親密な間柄になったらしい。どこまで親密かはさすがにわからないが。
「そうでしたか。でも、そのおかげでここを通ることが出来たのですから幸いです」
エレンが言った。
「だな」
スコットも頷いた。
それからは神の機器に従い霊山を少しずつ登って行った。
エレンは音を上げるかと思ったが、彼女は頑張って二人の後に続いて来ていた。
小休止を挟んだ時にスコットは尋ねた。
「エレン、疲れてないか?」
すると女神は微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。でも、私は疲れてません」
スコットが意外そうな顔をしてしまったのか、エレンは続けて言った。
「私も神として普段から鍛えてるんですよ。でも武術は苦手で、姉や妹には遥かに及びませんが……」
「だけど、この山登りで体力とガッツはあるのは証明された。ライフルの扱いもなかなかのもんだし、俺のチームに勧誘したいぐらいさ」
スコットが言うとエレンは照れたように笑った。
三人は歩みを続けた。
左右の森は小鳥のさえずりもしない不気味な静寂に包まれていた。
森と言えばキマイラとの死闘が記憶に新しい。猛獣の様な怪物は手強かった。ネルソンの投げナイフで気を逸らし、そこで必殺の隙が出来た。そうじゃなければ負けていただろう。できれば会いたくない相手だ。
その時、電子音が鳴り響いた。
エレンが神の機器、イレギュラー発見装置を覗き込んだ。
「この先に反応があります」
エレンは機器の音量をミュートにしてそう言った。
すると前方に動く何かが居た。
それなりに大きな身体をしている。ピョコピョコと動いては地面に顔を落として、まるで何かを啄んでいた。
登山道入り口での番兵の言葉を思い出す。三日前に出た討伐隊が戻って来ない。
嫌な予感が過ぎった。
戦場でも嗅いだことのある腐臭が鼻についた。それでスコットは確信した。
ギャアギャアと前方の影達はおぞましい鳴き声を上げ上空高く飛び上がった。翼を広げたそれらが三人に襲い掛かって来た。




