第四十二話 「出発」
エレンの部屋を訪ねると彼女はベッドの上で呻いていた。
「頭が痛いです」
「あんなに飲むからだ」
スコットは呆れたが、彼女をヤケにさせた自分にも原因があるので責められなかった。
「出発は明日に延ばした方が良さそうだな」
「い、いえ、それはできません!」
エレンがベッドから半身を起こした。
「今も歪みに苦しめられている人だっているんです! 一刻も早く……」
そこで彼女は両手で口を押えた。
「ほら、洗面器だ」
スコットが差し出すと、エレンはベッドに横になった。
「大丈夫です。でも、やっぱり出発は明日にしてくれると助かります。……すみません」
「まぁ、ゆっくり休めよ。いつもぶっ続けの旅だったしな、一日ぐらいゆっくり骨休めしたって罰は……当たらないよな?」
「当たらないと思います……」
エレンが苦し気に応じた。
「ま、とりあえずネルソンに知らせて来る」
スコットは部屋を出た。
ネルソンはすぐに見つかった。
「出発は明日に延期だ」
「何かあったのか?」
ネルソンが当然尋ねてくる。
「エレンが調子を崩しちまったんだ。無理やり旅させるわけにはいかねぇだろう?」
「わかった」
ネルソンは応じた。その去り際にネルソンから、覚えのある香りが漂ってきた。何かの花のような香り。確かアルヴィナの使っている香水だ。
昨日はつまり、ネルソンとアルヴィナは一緒にいたのかもしれない。しかし、何をやっていたのか、考えるのは野暮だとスコットは思った。
そうして彼はエレンの看病のため隣の部屋へと戻った。
二
「御迷惑をおかけしました」
エレンが申し訳なさそうに言った。
「良いって。それより復帰できて良かったな」
「はい」
三人は町の入り口にいた。
「反応は北の方にありますね」
神の機器の点滅する小さな矢印を見せながらエレンが言った。
「じゃあ、その方向へ行こうか」
スコットが言うとエレンが頷いた。スコットはネルソンの様子を窺った。
うんともすんとも言わないが、彼の眼光は前を見ていた。
どうやらこの町に未練は無いらしい。あったとしても折り合いをつけてきたのだろう。
「よーし、出発だ」
スコットの声と共に三人は北へ向かって旅立って行ったのだった。




