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第四十一話 「二人の宴」

 大イカが退治されたことが知れ渡ると、町中はお祭り状態になった。

 よほど大イカには苦しめられてきたらしい。総督のアルヴィナを称える声がどこへ行っても聴こえて来た。

「ネルソン、アンタ後悔してないだろうな?」

 夕暮れ時、満員の町の酒場に三人はいた。

 アルヴィナはネルソンやスコット達を英雄視するように取り図ろうとしたが、肝心の大イカを退治したネルソンがそれを拒否した。ネルソンは単に恥ずかしかったのか、それとも称えられるほどのことでもなく彼にとっては朝飯前だったのか、その心中は分からなかったが、結局総督のアルヴィナの手柄ということで落ち着いてしまった。

 するとネルソンが席から立ち上がった。

「出てくる。戻るのは明日の朝になるだろう。問題は無いか?」

 ネルソンはエレンに尋ねていた。

「はい、大丈夫ですよ。いってらっしゃいです」

 エレンが言うとネルソンは出て行った。

「剣でも見に行くのか? いや、それにしても朝までってのは無いか」

 ネルソンにもネルソンの事情がある。これ以上、スコットは考えるのを止めて冷えた麦酒を呷った。

「お品物をお持ちしました」

 酒場の若いウェイトレスが言った。

 そのウェイトレスが屈んだ時に、二つのメロンのように実った乳房をスコットは見ていた。

 するとエレンが麦酒のおかわりを注文した。

「無理するなよ」

「分かってますよ。ちょっと飲みたい事情が出来たんです」

 エレンは怒ったような口調で言うと麦酒を呷った。

 それからエレンは飲みに飲んでいた。顔は上気し、スコットも今日はここでお開きだなと決めた。

「エレン、そろそろ部屋に戻ろうかい」

 スコットがそう言った時だった。

「いいえ、まだまだ飲みます! 私はダイジョブです!」

「いやいや、大丈夫じゃないだろう。もうこれ以上はやめとけ」

 しかしエレンは頑なに頭を振った。

「何をそんなにヤケになってるんだ?」

 スコットが問うとエレンが言った。

「スコットさんは、大きなお胸が大好きなんですね!」

「は?」

 スコットは問い返した。

「とぼけても無駄です。私、見ましたよ。さっきウェイトレスさんのお胸を見ていたのを」

「ああ、確かに見てたな」

「それと総督府でアルヴィナさんの胸も見てましたよね!?」

 言われてみてスコットも思い出した。

「私、胸が無くて悪かったですね!」

「エレン、落ち着け」

 スコットはなだめようとしたがエレンは声を上げた。

「私だって大きくないですが、胸はあるんですからね! ほら、見せてあげます!」

 エレンが服の裾に手をやったのでスコットは慌てて止めた。

「やめろ、悪かった、悪かった。エレンの胸はな、そうだ、か、可愛い!」

「可愛い?」

「ああ、可愛い、可愛い」

「そうです、私の胸は可愛いんです! 分かりましたかスコットさん!?」

「はい、わかりました」

 スコットが応じると、突然、エレンがテーブルに突っ伏した。

 やがて寝息が聴こえて来た。

「やれやれ。勘定、ここに置いてくよ!」

 スコットはそう言うとエレンを抱きかかえた。

「スコットさん。……私、スコットさんのにおい大好きです……。私のお兄ちゃ……になってくださ……ムニャムニャ」

 エレンがそう寝言を言い、スコットは溜息を吐いた。だが、そんなエレンが愛らしくも思えた。兄代わりとして彼女をしっかり守らなければ。それと大きな胸を眺めるのは出来る限り止そう。そう彼は思ったのだった。

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