第四十話 「海の魔物(三)」
「アンタは最強の戦士だ。分かった、援護するぜ」
スコットが言うとネルソンは頷き見張り台に上って行った。
「何をしようってんだい?」
アルヴィナが駆け寄って来た。
スコットはサイクロプスと戦った時のことを思い出した。
「たぶん、敵の身体に飛び移るんだろう」
「そんなことを本当に……」
「奴ならやるよ。前にも一度あったんだ」
スコットはマグナムを連発し牽制した。エレンのライフルも続く。
触手が襲ってきたがアルヴィナが刃を振るって分断した。もっとも例によって再生するのは早かった。
ネルソンが見張り台の上に到達し、柵に足を乗せた。そして彼は跳んだ。太陽が片手に提げた剣を光らせる。
クラーケンの身体にネルソンはぶつかるとそこに深々と剣を刺し込んだ。
ネルソンがいるため、スコット達は援護射撃を止めた。
するとネルソンはそのままズルズルと怪物の身体を一刀の下に引き裂いて下へ下へと下がってゆく。
クラーケンが身動ぎし、触手がネルソンを襲った。
スコットはさかさず狙い撃ちをして触手を近付けさせなかった。
大イカの身体が割れ、傷口から体液と粘液、臓物が飛び出してきた。ネルソンはそのまま海面ギリギリまで切り裂いていた。
バシャバシャと臓物が海に落ちる。その中で一際脈動している灰色の肉塊にネルソンは泳いで追いつき、これに剣を突き立てた。
大イカは激しく痙攣し、そして海中へ沈んでいった。
「エレン、反応は?」
スコットは女神に尋ねた。
「遠くにありますが、ここでの反応ではありませんね」
つまり大イカ、クラーケンは死んだのだ。
「やった……のかい?」
アルヴィナの問いにスコットとエレンは同時に頷いた。
「よし、勝鬨を上げな!」
アルヴィナが声を上げると、船員や志願兵達の声が揃って木霊した。
ネルソンはロープを上り戻って来た。
船上の誰もが彼の勇気と功績を称えた。
すると、アルヴィナが歓喜しながらネルソンのもとへ駆け寄り、その身体を抱き締め、背中を叩いた。
「アンタみたいな命知らずがいたなんて感激だよ! 本当に、本当に良くやってくれた!」
ネルソンは特に照れる様子も無く、誰もが羨む美女からの熱い抱擁を受け流していた。




