第四話 「戦場へ」
スコットは思った。この噛みそうな名前の女は何かのセールスに来たのだろうと。
だったら、スコットよ。あの光りは何なのだ? もう一人の男が現れた時、空間が光り、どこからともなくそいつは姿を現したぞ。
そりゃ、手品とパフォーマンスだ。あの男も一枚噛んでるのだろうよ。
じゃあ、何故女は名乗りもしない自分の名前を知っているのだ。
それは何かで住所を調べたからかもしれない。
さて、一番疑問なのは、自分はアパートの自室に居たのだ。こんなところへ来た覚えなどない。ということだった。ならば正解は……。
「どうやらやっぱり夢の中に来ちまったようだな」
スコットが言うと、噛みそうな名前の女は激しく頭を振った。
「違います! あなたは神に選ばれたのです! スコットさん!」
「それは名誉なことだ」
スコットが嘲笑うと、噛みそうな名前の女は頬を膨らませて御立腹した。
「どうして信じてくれないんですか!?」
「信じられる要素が無い」
「だ、だからこそじゃないですか! 神が、この私があなた方をここに呼んだのです!」
あなた方だと? スコットは先程から押し黙っているネルソンとか言う名の男に尋ねた。
「アンタらグルじゃなかったのか?」
「どういう意味ですか!?」
答えたのは噛みそうな名前の女の方だった。
「……用が無いなら俺を戻せ、神よ」
ネルソンが言った。すると噛みそうな名前の女は目を輝かせてネルソンの方を振り返った。
「信じて頂けるのですね、私が神の一人だということを!」
スコットには信じられないが、ネルソンは言った。
「あの台の上にあるのは水鏡だ。神が地上を覗く時に使う」
「そうです! そうです! そうなんです!」
噛みそうな名前の女は勝手に興奮し飛び跳ねて喜んでいた。
「胡散臭いな。やっぱりアンタらグルなんだろう? 俺を何かに入信させようって算段か?」
「違います! でも、そうですね、ネルソンさんのいた世界の方がこの神界については理解がありそうですね。水鏡のことも知ってましたし」
「とか言って取り繕ってるが、やっぱりアンタらグルで俺を何かに落とそうって考えだろう?」
スコットが言うと噛みそうな名前の女は再び頬を膨らませた。
「もう良いです! こんなことしている間にも地上は酷いことになっているのですから……。良いですか、あなた方は選ばれた勇者なのです。地上を救うための……」
すると女は強い眼差しを向けて言った。
「これから我々は戦場へ赴きます。そうすれば、スコットさんも少しは信じる気になれるかもしれません」
「はいはい、そうですか」
スコットがそう言った時だった。あの白い光が足元に現れ身体全体を覆った。
「うわっ、またか!? おい、どういう仕掛けなんだこれは?」
不意に強烈な眠気が襲ってきた。気分が悪くなった。エレベーターが上昇するときのような妙な感覚を覚えた。そうしてスコットはいつの間にか気を失っていた。




