第三十九話 「海の魔物(二)」
ネルソンはアルヴィナを掴む触手をすれ違いざまに斬り捨てた。
アルヴィナが落下する。ネルソンは海の中で彼女を受け止めた。
「ロープだ! 二人を助けろ!」
船員達が必死の形相でロープを準備する。
触手は海の中にいるネルソン達を襲おうとした。
「スコットさん!」
エレンがアサルトライフルを構える。
「おう!」
スコットもマグナムを敵に向けた。
スコットもエレンも思いを込めて引き金を引き続けた。
軽快な音と、轟音が響き、大イカの身体に次々穴を開ける。
大イカは触手をこちらへ向けた。
その隙にネルソンとアルヴィナは船員の投げたロ―プを掴み、引き上げられていった。
いくら弾丸をぶち込んでも敵の巨体にはほぼ無意味の様に思えた。
だが、スコットとエレンは攻撃を止めるわけにはいかなかった。
ふと、船上が慌ただしくなった。
アルヴィナが横たえられている。
「お頭!」
船員達の必死な声が聴こえた。
どうやらアルヴィナは息をしていないらしい。
「蘇生術を!」
船員が叫ぶ。
「だ、だが、それはお頭の唇を奪うことに……」
別の船員達が狼狽するように言った。
何をしてるんだ!
スコットはもどかしく思いながらも攻撃を続けた。
その時、ネルソンがアルヴィナの上に屈み込んだ。彼は何の躊躇も見せず唇を重ね合わせた。
「スコットさん!」
エレンの呼ぶ声にスコットは正気に戻った。彼目掛けて触手が振り下ろされようとしていたのだ。
スコットは寸前のところで避ける。触手は重い風を孕み甲板を叩き割った。
志願兵達も弓矢で応戦したが、宙を自在に舞う鉄の鞭のように破壊力を持つ触手に、一同は尻込みするしかなかった。
「ちっ、どうすりゃ良い」
「心臓か脳をやるしかないだろう」
ネルソンが隣に並んでいた。
「それができりゃ良いが、弾薬じゃ奴に全くダメージを与えられないぜ」
スコットは目の端にアルヴィナが部下に抱えられて立っているのを見た。
「俺の剣ならできる。援護を頼んだ」
鋭い眼光を敵に向けネルソンがそう言った。




