第三十五話 「アルヴィナ(一)」
「そうでしたか、ということは、志願兵の方々だったのですね」
身なりが良く恰幅のある男は驚き感心したようにそう言った。
「志願兵?」
スコットが問うと船乗りの男が答えた。
「件の魔物を退治に向かう勇者を募集してるんだ。これも何回目かは知らんがな」
それだ。と、スコットとエレンは顔を見合わせた。
「どこで募集してるんですか?」
エレンが問うと船乗りは答えた。
「総督府だ」
二
恰幅の良い男が総督府への道順を教えてくれた。
大通りに戻り、そこを北上する。坂道が続き、やがて大きな建物が見えて来た。
大きな格子状の門扉が閉ざされ、その前に門番が左右に立っていた。
「何か用か?」
門越しに建物を眺めていると門番が尋ねて来た。
「志願兵だ」
スコットがそう一言述べると、門番達は頷き合い、門を開いた。
「ここで待て、本日総督がお会いになるかは分からん」
一人が建物へ駈け込んで行った。
そして門番が戻って来て言った。
「総督がお会いになられるそうだ」
三人は建物の中へ案内された。
内部は静かだった。殺風景というわけでもない。所々に値の張りそうな壷や反物が飾られていた。
二階へ上がる。そのまま門番の後に続いて行くと、ある部屋でその足が止まった。大きな扉であった。厳めしい面構えの見張りが一人立っていた。
「おう、そいつらかい、新しい志願兵は?」
「ええ、そうです」
番人と門番がそう言葉を交わした。
「男二人はなかなかやりそうだが、お嬢さん、アンタも志願するのかい?」
番人は困惑したようにそう尋ねた。
すると、部屋の中から鋭い声が響いた。
「無駄話してるんじゃないよ。さっさと客人を部屋に通しな!」
女の声だった。
「はい、お頭! じゃなくて総督! 今すぐお通しします!」
番人は狼狽して応じる。そして扉を開いた。
広い部屋だった。窓から日が差し込んでいる。テーブルと椅子があり、壁には数々の剣や盾が立て掛けられていた。
窓の隣に大きな机があり、一人の人物がこちらを見詰めていた。
「ようこそ、アタシの部屋へ。アタシが、総督のアルヴィナだよ」




