第三十三話 「首無しの騎士達(五)」
「エレン、待たせたな」
スコットは言い、ネルソンと共にエレンの前に駆け付けた。
デュラハンを後ろから狙撃することもできたが、銃口の先には囲んでいるエレンや旅人達がいるため、正面に回り込んだ。
「スコットさん、ネルソンさん」
エレンが難しい顔を一変し、輝かせた。
スコットは手早くマガジンを満タンな物と取り換えた。
敵も数を減らし、その圧倒する異質さにも慣れ、スコットもようやく戦いに余裕を感じることが出来た。
彼はデュラハンの脚を撃った。
轟音を上げマグナムが手の中で躍動する。弾丸は甲冑の脚を撃ち抜いた。それで敵がよろめくと彼は思ったが、それは浅はかだった。
敵は体勢を崩すことも無く斬りかかって来た。
疾風の如くネルソンが飛び出し、亡霊騎士とぶつかった。
目にも見えぬ剣の打ち合いが火花を散らし、剣風となり、両者は縦横無尽に渡り合った。
無限に続くような競り合いの末、二本の剣が夜空に高く舞い上がった。
囲んでいる篝火が二つの刃を煌めかせる。
「ネルソン、離れろ!」
スコットは叫びながら素早くマグナムをデュラハンの兜首に合わせた。
ネルソンが横っ飛びに転がり離脱する。
スコットは無防備になった敵のその弱点目掛けて引き金を振り絞った。
銃の強い反動が奥歯の根を幾度も揺るがした。
連発された弾丸をデュラハンは右腕を伸ばして受け止めた。だが、銃弾は貫通し、その下にある兜首に無数の大穴を開けた。
血のような液体を飛散させ、敵が耳をつんざく様な悲鳴を上げた。
その声が断末魔となり、デュラハンの姿は消えていった。
スコットは深く溜息を吐いた。
終わった。
人々から歓喜の声が湧き上がった。
二
翌朝、隣町から大勢の人々が訪れ、埋葬作業は大きく進展した。
全ての穴に土をかけ、ギルバート神父が死者を弔う言葉を唄い、全てが終わったのはそれでも夕暮れになっていた。
だが、ちょうど良かったのかもしれないとスコットは思った。
新たな首無しの騎士達が、また今宵現れる可能性もあったからだ。篝火を焚き、武装した民兵達と共に夜を明かしたが、心配事は杞憂に終わった。
「エレン、反応は?」
「ここではなく遠くにあります。デュラハンではないと思います」
スコットの問いにエレンが応じた。
「共に戦うことができて光栄でした」
軽い朝食を食べた後、旅立とうとする三人を神父が見送りに現れた。
「俺達もだよ、神父さん。町の復興は大変だろうが頑張ってくれ」
スコットが言うと神父は頷いて言った。
「新たな歪みを正しに行かれるのですな?」
そう言われ、スコットとエレンは顔を見合わせた。エレンが応じた。
「その通りです。今、この国には神父さんの言う歪みが生じています。それを正すのが私達の役目なのです」
「あなた方はきっと神の遣わした勇者なのでしょう。その行く末にいつまでも光りがあらんことを」
そして神父は食料と、その他に長弓と矢筒を差し出した。
「ネルソン殿。もしかしたらこれがあなたの役に立つかもしれない」
ネルソンは長弓と矢の入った筒を受け取った。
「良いのか?」
「無念にも死んでいった人々からのほんの感謝の気持ちと思ってください。あなたなら使いこなせるでしょう。どうぞ持って行かれよ」
「感謝する」
ネルソンは短く礼を述べた。
そうして三人は町を旅立ったのだった。




