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第二十六話 「女神復活」

 まさか、自分が死者の門に並ぶとは思わなかった。

 空は地上で言う夕焼けの色に染まっている。その下で、無数の星々の中で今日死を迎えた魂の人々が列を成している。人々は増え続け、いつの間にか最後尾だったはずのエレンは列の半ばになっていた。

 まったくドジをやった。自ら管理する地上の異常を正そうとして結局死んでしまった。

 神とはいえ、地上へ赴けば命は有限へと形を変えるのだ。それは分かってはいたが、結局死んでしまった。こんな情けない神はきっと自分一人だけだろう。最高神の家名に家系に泥を塗った。

 だが、問題は自分はこの後どういう道を辿るのかだった。

 死者の門を潜って、はざまの世界へ行くのだろうか。そしてはざまの世界で転生を望んで今度はどこかの地上の何者かの生物へと命を変えるのか。そしていつか死んで、またここへ来て……。

 もう、神には戻れないのだろうか。

 神として情けなくて憂鬱な気持ちになった。

 その時、重大な事を思い出したのだったのだった。

 自分の管理する地上へ召喚したスコットとネルソンはどうなってしまうのだろうか。自分は死んだばかりか、助けてくれていた恩人ともいうべき二人の人間の人生を狂わせてしまった。

 この際、自分の末路なんてどうでも良い。ただし、スコットとネルソンだけは元の世界へ戻してやって欲しい。

 死者の門の管理人に掛け合って、神の誰かに事情を話すしかない。

 いや、そもそも人として死んでしまった自分にとって神は尊い存在になってしまった。目通りすら許されないかもしれない。それが実の家族であってもだ。

 だが、スコットとネルソンに対する責任は果たさなければならない。無茶は承知でやってみるしかなかった。

 死者の列が動いてゆく。地平の果てまで続く左右の石壁が見えてくる。

 その時だった。

 自分の名前を呼ぶ声が聴こえた。

「エレン!」

 スコットの声だった。

 声は茜色の空の何処からか聴こえてくる。

「エレン! エレン、戻って来い! アンタ、神様なんだろう!? 神様は死んだりしないんだろう!?」

 不意に身体が軽くなってゆくのを感じた。

 時空の歪みに引き込まれてゆくような感覚だった。

 そして強烈なまどろみが彼女の意識を奪い去っていったのだった。



 二



 エレンが咳き込んだ。

 スコットは慌てて唇を離した。

 エレンの腕が動く、脚が動く、そして目を開いた。

「あれ、ここは?」

「アンタ、少しの間だが心肺停止状態になっていたんだ」

 スコットは喜びながらそう言った。

「そうだったんですか」

 まだ眠そうにエレンはそう答えた。

「心配かけさせやがって。でも、まぁ、お互い様なんだよな」

「お互い様?」

「ネルソンに聞いたぜ。俺が同じ心肺停止状態になった時アンタが蘇生術を施してくれたんだろう?」

「ええ? ああ、はい。はい、そうでしたね」

 エレンはようやく微笑んだ。

 スコットは安堵の溜息を吐いた。そして手を差し出した。

「お帰り、神様。いや、エレン」

 エレンは目を瞬かせたが頷いて握手に応じた。

「ただいま、スコットさん」

 エレンは眩しい笑顔を見せてくれた。その笑顔がスコット自身に訴えたのだった。彼女に対する妙な情愛の正体、それは家族だ。俺にとって、もはや彼女は愛すべき妹のようなものなのだ、と。

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