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第二十三話 「百獣の王(一)」

 道を進んでゆくと大きく開けたところへと着いた。

 木の切り株が数多く目立つそここそ、ここへ来る過程で出会った木こり達の働く場なのだろう。

「と、言うと怪物はここにいるわけだな」

 スコットが言うと、エレンが機器を見て言った。

「近くにいます。段々迫って来てます!」

 点の羅列された矢印が大きくなっている。それが斜め後ろを向いた。

「そこか!」

 スコットがマグナムを構える。

 茂みを揺らして飛び出してきたのは、スコットの居た世界でも馴染みのある顔だった。

「ライオン?」

 確かに正面の顔と身体つき、その金色のような茶色の毛皮はライオンのものにも見える。しかし、違っていたのは背中にヤギの首があり、振るわれる尻尾が黒っぽいヘビになっていたことだった。

「キマイラです!」

 エレンが声を上げた。

「キマイラ?」

 そのキマイラは咆哮を上げた。ライオンの声とヤギの声が入り混じった奇妙な吼え声だったが、激しい敵意を感じさせるには十分だった。

「殺して良いんだな、神様?」

 スコットが問うとエレンは頷いた。

 彼はライオンの額に照準を合わせマグナムの引き金を引いた。

 だが、キマイラはそれを避けるや否や、こちらに向かって突進してきた。

 三人は散ってそれを回避した。暴風となった一陣の風を纏った巨体を見て、こいつの体当たりはサイクロプス並みだとスコットは気を改めた。

「キマイラは炎を吐きます! そしてヤギの顔は」

 エレンが言い終わる前にキマイラが再度突進してきた。

「ヤギの顔は呪われた歌を歌います」

 その速度の前でギリギリで回避するとエレンが言葉を続けた。

 スコットは引き金を引いた。キマイラの尻に向かって連射した。

「尻尾のヘビは猛毒を持っています。噛まれない様に注意してください」

 エレンが言い終わるとともにキマイラはこちらを振り返った。

 するとヤギの声が、何かの言葉を抑揚をつけて喋り始めた。

 その途端に全身に痺れが走るのをスコットは感じた。隣でエレンが苦し気な声を上げて片膝をついた。

 スコットは彼女の名を呼ぼうとしたが、痺れが激しくなり舌が痙攣し始めていた。

 これがヤギの呪われた歌だ。そう気付いた時にはもはや何もできなかった。ライオンの真っ赤な両眼がこちらに向けられる。マグナムは既に取り落としていた。

 背中で呪われた歌を歌いながらキマイラが突進しようとしてきた。

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