第二十一話 「第三ステージへ」
マグナムの轟音が森中に響き渡る。
わきの茂みから飛び出してきた黒っぽい小柄な怪物が、断末魔の声を上げて吹き飛び倒れる。
「一発で斃れてくれる分には良いが……」
新手が飛び出してきた。
再びスコットのマグナム弾が炸裂する。
ギャン! と、最期の声を残して怪物は背中から地面に落ちていった。
怪物は人間の子供の背丈ほどであった。黒っぽく毛むくじゃらで、牙の突き出た大口を持ち、目はエメラルドのように緑色だった。ゴブリンだとエレンは告げた。
神の機器が指し示した方角は街道の半ばから入る森の中だった。
ただし道は整備されていて、馬車と思われる轍の跡もあった。人が頻繁に行き来しているのだろう。
歩みを進めて行くと、逃れて来る男達と出会った。
彼らは木こりだった。その彼らが言うには見たことも無い動物というより、怪物が出たのだという。
その怪物がこの永久に湧き出てくるようなゴブリンの事を指しているのかは分からないが、一行は歩みを進め、こうしてゴブリンと遭遇したというわけだった。
ネルソンの剣が、反対側から出てくるゴブリンを幾度も血煙一刀にし、エレンは前方から迫ってくる複数のゴブリンをアサルトライフルの掃射で迎え撃った。
各々役目を心得ている。スコットは少しだけ嬉しく思いながら、飛び出してくる怪物を正確に撃ち抜いていった。
ようやく襲撃が止み、ゴブリン達は撤退して行った。昼頃から戦い続け既に夕暮れだった。百以上は殺した。死屍累々、三人で四百は下らないだろう。
エレンがゴブリンの屍を指差した。
するとその亡骸は消えてなくなった。
「何だそりゃ、まさか魔術ってやつか?」
「ちょっとしたものですけれどね。ゴブリン達の遺骸を野晒しにはできませんので、神界の埋葬機関に送りました」
エレンはそう言って、結局全ての亡骸を送り届けた。
「どうします? このまま進みますか?」
エレンは肩を上下させ、重たいライフルを地面に置いていた。どうやらライフルに結び付けてあったバンドが彼女の肩を圧迫していたらしい。華奢な身体だ。無理も無いことだった。
「……今の俺達は神の戦士だ。神が決める行く末に従うだけだ」
ネルソンが言い、エレンは困った様な顔をした。
スコットは見兼ねて提案した。
「今日は休もうぜ。もしも木こり達が言っていた化け物がゴブリンどもじゃないなら、これまで通り少々歯応えのある奴に決まってる。夜にわざわざ飛び出して行っても銃の狙いがつけられない。不利なだけさ」
「そうですね。今日は休みましょう」
エレンが言い一行は適当な場所に腰を下ろした。
スコットもようやく一息吐いた。
ネルソンが茂みの中へ入って行った。
「トイレか?」
「薪拾いだ」
「そっか、火を起こさなきゃな。俺も手伝うぜ」
「一人で良い。お前は神の護衛を頼む」
スコットが申し出るとネルソンは応じて茂みの中へ消えて行った。
エレンは機器に目を落としていた。ジッとまるで取りつかれたようにランプが作る矢印を見詰めていた。
スコットは村を出る際に幾らか村人から融通してもらった食料を漁った。
ビーフジャーキーに、ドライフルーツ。あとは乾パンみたいなものだ。
「ほれ、神様。食事にするぜ」
スコットが言うとエレンは弾かれたように顔を上げた。
「アンタには責任があるんだろうが、そう思い詰めるなよ。俺とネルソンがいるんだ。どうにかしてみせるさ」
エレンは僅かに表情を明るくさせて干し肉を受け取った。
「ありがとうございます。そうですね、スコットさんとネルソンさんがいるんです。きっと上手くいきますよね」
そうして苦労して干し肉を食い千切る様を見ていて、スコットはこの神を微笑ましく思ったのだった。




