第十八話 「死者の王(二)」
ネルソンの剣の腕前は既に目にしている。剣に置いては彼は最強だろうとスコットは思っていた。そのネルソンの剣とワイトキングが五部に打ち合っている。
金属のぶつかる音が高らかに響き続けていた。
一人蚊帳の外に放り出された気分になりかけたが、スコットはここは多勢での利を生かして、ワイトキングの気を引き、ネルソンの援護をすることに決めて動いた。
大小の地割れを飛び越え彼は競り合う両者の元へ来た。
死者の王の姿がよりはっきりと見えた。骸骨がところどころボロボロだが黄金の外套を身に纏い、遠くから見た通り同じ色の冠を頭に頂いている。
スコットは死者の王の側面へ忍び寄り銃口を向けた。
不意に、死者の王ワイトキングは片腕をこちらに向けた。その瞬間、骨の腕が伸び、瞬く間にスコットの喉元を鷲掴みにし締め上げた。
圧倒的な力だった。
息が出来なかった。だが、徐々に力を増している骨の腕から察すると、死者の王の目的は窒息死させることではなく、喉をまるまる握りつぶす事だろう。
ネルソンが助けようと動いたが死者の王はそれを阻んで杖を振るった。
スコットはマグナムを死者の王の肩口に向けた。
自分の窮地ぐらい自分で切り抜けてやる。俺は傭兵だぞ。
彼は弾丸を連射し、全て撃ち尽くしたところで死者の王の、骨の腕が肩口から砕け散り煙となった。
彼は解放され失った分を取り戻すために大きく息を吸い込んだ。
ネルソンが下がった。その途端にワイトキングの振り下ろした杖先から青白い稲妻が放射され、ネルソンを貫いた。
「ネルソン!」
倒れ行く相棒の姿を見てスコットは声を上げた。
感電死したのだろうか。いや、考えるな。今、やるべきことは目の前の敵を斃す事だけだ。もはやそれを遂行できるのはこの俺だけだ。
スコットは新しいマガジンに素早く交換すると死者の王の頭部を撃ち続けた。
冠が吹き飛び頭蓋骨が露わになる。だが、幾度弾丸を受けても頭蓋骨には穴は開かなかった。
上等だ。俺が必ず大穴をぶち開けてやる。
先程肩口を吹き飛ばしたのだ。可能性は十分にある。
彼は無心になって引き金を引き続けた。
その時、確かに見た。連発された弾丸が死者の王の頭蓋骨を僅かばかり吹き飛ばしたのを。
しかし、死者の王は弾丸に怯む様子も無く杖先をスコットに向けた。
杖先から稲妻が放たれたが、スコットは逸早く判断し地面に飛び退いてそれを避けることが出来た。
だが、敵は杖を振るい、雷を掃射するように操ってきた。立場が逆転し、スコットは逃げに転じた。
俺まで倒れるわけにはいかない。
エレンのことが頭に浮かんだ。彼女に任せろと俺は言ったんだ。ここで倒れては格好がつかない。
すると今度は頭上でも雷鳴が響き始めた。
スコットは絶望した。前からも上からも落雷を乱発されては逃げ道が殆ど無い。
このまま死ぬか!?
エレンと、ネルソンの二人の仲間の姿が脳裏を過ぎる。
分かってる、俺の意地に懸けて相討ちに持ち込んでやる!
スコットは逃げるのを止め銃口を死者の王に向けて引き金を引いた。
連発された弾丸がその頭蓋骨を粉砕するのと、全身に鋭い痛みが走るのはほぼ同時だった。




