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第十六話 「死者の群れ(二)」

 戦場でも危機は幾つもあった。しかし俺はそれを脱して生を掴んできた。

 迫ってくる亡者に回し蹴りを放ち、素早く新手に銃弾を浴びせて撃退する。

 敵は休む暇を与えてくれなかった。

 スコットはマガジンを替え、四方八方の死者達に新たな銃弾を見舞った。

 ワイト、骸骨が躍り掛かって来た。

 スコットは照準を素早く合わせて二発撃った。ワイトは骨の身体を飛散させながら煙となった。

 右側から腐乱した腕が伸ばされた。

 スコットはそれを回避し、一瞬掴もうとしたがおぞましさに思い留まり、腕の持ち主の頭部目掛けて蹴りを放った。

 ゾンビが崩れ落ちる。

 そうして窮地を脱しようと精一杯抵抗してきた。スタミナが切れ始めてきているが全身を駆け巡るアドレナリンがそれを忘れさせた。

 死者達の迫る腕と、牙の生え揃った顎をかわし、スコットは蹴りを放ち、掌底をぶつけた。なかなか銃を構えている暇が無かった。

 それでも彼はとどめを刺すべく隙あらば引き金を引いた。

 その時、包囲されていた一角が崩れ落ち、剣を手にしたネルソンが姿を現した。

「悪いな、相棒」

 スコットが言うと、ネルソンは頷きもしなかったが、その後ろからヒョッコリとエレンと子供が顔を見せた。

「こちらはどうにかなりました。スコットさんが敵の気を引いてくれたおかげです」

 エレンが言い、スコットは苦笑した。

「結果的にそうなっただけさ」

 子供を中心に押し込んで三人で背中合わせになり残る敵達に向き直った。

 マグナムが、ライフルが、剣が、死者達を打ち砕き煙へと変えてゆく。

 あれだけいた亡者達を三人は掃討し終えた。

 墓場には静寂が戻った。

 これが普段あるべき空気なのだろう。

 スコットはその場にへたり込んで汗を拭った。

「スコットさん、お疲れ様です」

 エレンが労いの声を掛けて来た。

「アンタも良くやったさ」

 スコットが言葉を返すとエレンは微笑んだ。まだあどけない雰囲気があるが、神の笑顔は眩しくて、素晴らしく美しかった。それだけで疲労が吹き飛びそうなほどであった。

「一旦、村に戻りましょう。こちらが安全になったことを皆さんに伝えなければなりません」

 エレンがそう言いスコットは立ち上がり頷いた。

 その時だった。

 小屋が木っ端微塵に吹き飛んだ。

 虚ろな呪詛が聞こえ始めてくる。

「どうやら、まだ大物がいるらしいな」

 スコットはマグナムを、その隣でネルソンは無言で剣を構えた。

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