異世界で 嬉しいことに メシうまい
トマスさんと別れて道なりにまっすぐ進むと教えられた通りの剣に杖が交差した看板を見つけた。
その看板を下げた建物はかなり大きくその横には訓練用のスペースなのか藁でできた人形があった。
あれは訓練とかに使うスペースなのかなと考えながら扉を開くとファンタジーの定番のような世界があった。
目の前にはギルドの受付らしき場所、列ができておりその先には美人の受付嬢たちがおり、右側の大きなスペースでは飲食エリアになっているのかすでにかなり数の冒険者らしき人たちが酒と料理に舌鼓を打ちながら盛り上がってるようだ。
今の時刻はもう夕方に近いため冒険者たちも依頼報告で結構並んでる
だろうか、と見ていると一つだけほとんど並んでいない列があったのでそこに並ぶことにした。というかこの時間から並んでいたら、順番がいつ回ってくるかわからないので列の少ない位置に並ぶのがいいかなと思ってここに並ばせてもらった。
これから登録した後にトマスさんの宿を受付に聞いて探さなければならない以上、あんまり時間をかける訳にもいかないからね。そんなことを考えてると前の冒険者さんが終わったのか列から離れていき、僕の番になった。
僕は受付の前までいくとどうやら男性のようだ耳の形が少し尖った形をしているからエルフ族の男性かな。僕と同じ金髪の男性だ。
ってか、他が女性だけどここだけ男性だから一つだけ列が空いてたんだろうか私的には助かった形になった。
「こんばんは、どういったご要件でしょうか」
「冒険者登録をしたくてきたんですがおねがいできますか」
「新規登録の方ですね、ではこちらの質問に答えてください 簡単な質問なので安心してください」
質問っていうと名前とかを聞かれるのかな、職業とかはいいけど年齢は一応実年齢のほうを答えておくのが無難なんだろうか、まぁ聞かれたら実年齢で答えておこう。エルフの男性は下の方から一枚の紙を取り出した。
「それでは、名前のほうからおねがいします」
「リークといいます」
「リークさんですね それでは次に年齢はおいくつですか」
「今は28歳です」
「はい、では職業は何に就いていますか」
「魔法使いです」
「性別と種族をお答えください」
「小人族で男です」
「はい、では最後にこの水晶に触れてください」
エルフの男性はそういうと机の下から水晶を取り出した。ゲーム内で見たことないアイテムだが何なんだろうか。僕はとりあえず、触れてから考えることにした。僕が水晶に手を当てると水晶の中に文字が浮かび上がる。そこにはさっき僕が答えた情報とまったく同じ物が浮かび上がっていた。
「はい、質問でお答えいただいた内容と水晶による確認で内容の一致が確認できました」
どうやらこれは触れた対象の情報を読み取る物だったらしい。でも偽装の指輪で偽装した魔法使いのほうが浮かびあがってよかった。もしかしたら、本当の職業やステータスを見破るアイテムもあるかもしれないから注意しないといけないかもしれない。それ用の対策は今のところ考えつかないけどいずれ対策しておかないと危険だろう。
「ではカードの発行の手続きは以上ですが発行には1日ほどかかるため こちらをお渡ししておきます」
エルフの男性はそういうとハガキほどのサイズの木の板を渡してきた。木の板には番号が書いてあり、1という数字が掘られていた。というか1日かかるんだ、登録手続きしたらすぐにカード発行されるもんだと思ってました。
僕はエルフの男性から木の板を受け取るとそれをローブのポケットにしまい込んだ。
「登録料は明日、カードを渡す際にお支払いください」
「すいません、ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」
「冒険者のことでしたら明日カードを渡す際に説明しますがどういった内容でしょうか」
あ、そこらへんはちゃんと明日説明してくれるのね良かった。まぁこれは聞いておかないとこれから自分で探すのも大変だし、トマスさんも聞いてくれれば教えてくれるっていってたから大丈夫でしょう。
「安らぎ亭っていう宿屋はどこらへんにあるんでしょうか 今日はそこに泊まる予定なので場所を教えて欲しいのですが」
「安らぎ亭・・・はい、こちらのギルドから出て右の道をまっすぐいって 最初の別れ道を左にそのあと突き当たりを右に進んでもらって歩いていけばベットとお肉の絵が書いてある看板があるのでそこが安らぎ亭ですね」
えっと・・・出てすぐ右にいって最初の分かれ道を左にいって突き当たりまで歩いていってそこから右にいくとベットとお肉の絵の看板が書いてある場所が安らぎ亭ね・・・よし、覚えてる内に向かおう。
「ありがとうございます」
「いえ、では明日には出来上がってると思いますので」
エルフの男性に失礼しますと告げると、エルフの男性はニッコリと笑い軽く頭を下げた。
僕はギルドの入口に向かい、扉を開くと外はすっかり夕方になっていた。早めに宿に行きたいところだな
僕は教えられた道順に沿って街を歩きつつ、周りを見回す。この時間は結構色々な場所が店じまいなのか片付けをしているのが見れる。逆に料理や飲みを提供する場所はここからが稼ぎ時なのか結構客寄せもいるようだ。
どうやら料理だけなら食べ物の絵、お酒とかあるなら発泡酒というかエールのような絵がついているようだ。
僕はのんびりと街中を見つつ、本当に異世界にきたんだなという感慨深い思いを抱きながら宿への道を歩いていくと気づけば少し先のところに教えられたベットとお肉の看板を掲げたお店が見えた。
どうやらここが教えられたトマスさんのお店の安らぎ亭だろう。よく見ると看板の絵の下にしっかりと安らぎ亭と書いてあった。教えられた絵と名前が合ってるからたぶんここで間違いないだろう。
僕は早速、お店の扉を開くと余り馴染みのない光景が広がっていた。
目の前には客を受付するためのスペースなのかそこそこ広い光景が広がっており、その奥の扉のついていない部屋からおいしそうな匂いが漂ってくる。
どうやら奥が食堂になっているんだろうか受付の席には小さな女の子が鼻歌を歌いながら座っていた。トマスさんの娘さんかな、茶髪のかわいらしい娘さんだ。
僕は受付を済ますためにもその女の子のとこまでいくと女の子もこちらに気づいたのか鼻歌を歌うのをやめ、僕に向かって笑顔でいらっしゃいませと声をかけてきた。
「宿は空いていますか あと、トマスさんがいらっしゃればリークがきたと伝えていただいて欲しいのですが」
「はい、部屋は空いてますよ・・・えっとお父さんに伝えてくればいいんですね ちょっと待っててください」
女の子はタタタっと足音をさせながら受付の後ろにあった扉を開けてお父さんお客さんが呼んでるよーっと声をかけた。奥からいま行くと男性の声が聞こえたがこの声はトマスさんの声で間違いないだろう。
予想通り、少しするとトマスさんが娘さんとこちらにでてくる。トマスさんは僕の顔を見るとニっと笑いながら声をかけてきた。
「お、リークきたなぁってーことは冒険者登録はしてきたんだな」
「はい、トマスさんのおかげで滞りなく登録をすることができました」
「気にすんな気にすんなって世の中、助け合いが大事だからな 俺も困ったことがあれば何か頼むかもしれないからよろしくな」
「えぇ、僕にできることであれば引き受けますよ」
「お、それはありがたい言葉だな」
そう答えるとトマスさんはいままでの笑みから方向を変え、
まるで悪巧みをするような子供の顔になった。えっと…何か僕はやらかしてしまったんだろうか
「じゃあ、早速頼みごとだ 家の宿の部屋が空いちまってるんだよなぁ 困ったなぁ」
トマスさんはニヤニヤしつつこちらをチラチラ見てまるでぼやくようにいい放った。
ふふ…宿に来たんだから勿論泊まるつもりだったし、ここは乗せさせてもらおうかな
「おぉ、それは大変ですね そうだ、僕は今日の宿が決まってないのでよければこちらで泊めていただけませんか」
「へへ、毎度あり 一泊当たり銀貨7枚で夕飯と朝食付きだ 十泊するなら同じく夕飯と朝食付きで小金貨6枚だ」
トマスさんは悪戯が成功したような子供の笑みを浮かべている。なんというか本当にいい人だなぁこの人…っとトマスさんがいい人なのはいいこととして1泊銀貨7枚で夕食朝食付きか…でも10泊するなら更にお得と…まぁ、腰を少し据えたいところだからここは10泊のほうにしておこうかな
「じゃあ、すいません10泊でお願いします」
僕は金貨を一枚を懐から取り出す。まぁ懐から取り出すフリをしてインベントリから手に取り出してるんだけどね
門番からもらった銀貨なんかもポケットにしまうフリをしてインベントリに戻してある。さすがに硬貨をジャラジャラさせながら歩くのは嫌だったからね、インベントリに戻せるか試す実験も兼ねてやってみたが無事に戻せたから良かった。
トマスさんは僕から金貨1枚を受け取ると奥の部屋にいき、少しすると小金貨4枚と鍵をもってきて僕の手に乗せた。
「じゃあ、これがお釣りの小金貨4枚とお前さんが今日泊まる部屋の鍵だ 部屋は2階の一番手前の部屋だ」
「ありがとうございます。そういえば夕食と朝食付きなんですよね」
「おう!俺の自慢の嫁さんの手料理だ その鍵をもってあっちに食堂の部屋があるからそこに入って適当に座って机の上に鍵を置いておいてくれれば嫁さんがお前さんのとこに料理を運んでくれるっていう仕組みだ」
つまり、この鍵は部屋の鍵でもあるが食券も兼ねてるのか忘れないようにしておかないと
「じゃあ、先に食事をもらってから部屋にいきますね」
「あいよ、ゆっくりしていってくれ」
僕はトマスさんにいわれた奥の食堂に入るとすでに何人かの人たちが席に座りご飯を食べていた。
僕も適当に空いてる席に座り、教えられた通り机の上に鍵をおいて待っていると
女の人がやってきた。彼女はミアさんという名前で先ほどあった女の子はシュミレというらしい。
ミアさんはトマスさんから僕のことを予め聞いていたのか僕がリークだというとじゃあ、明日から冒険者ですね、しっかり食べていってくださいねっといいながら厨房に戻っていった。
彼女ひとりで料理と配膳をこなしているんだろうか少し待っているとミアさんが料理をもってきて僕のテーブルの上に置いてくれる。目の前には何かの足のお肉とパン、それと豆が入ったスープが置いてある。
とてもお腹が減ってきたがその前にミアさんにこれが何の料理か聞いてみるとホーンラビットというお肉をニンニクなどの調味料で焼き上げた物と同じくホーンラビットのお肉をだしに使って作った豆のスープでパンは近場のパン屋さんから頂いている物だということだラビットということは兎肉なのか・・・食べたことないけど大丈夫だろうか
僕は恐る恐る、フォークを使ってホーンラビットの肉に突き刺す。肉はしっかり焼いてあるのかカリっと軽い音をさせながら刺さった。僕はそれを一気に噛みちぎるようにして肉を口に入れた。僕は口の中でしっかり噛み味を堪能してみると肉の感触自体は鶏のお肉みたいな感触だ、しっかり味付けされているのか噛めば噛むほどおいしい。僕は次にスープをスプーンを使って掬う。綺麗な色をしたスープを口にいれ舌で味を確かめる・・・すごくおいしい。スープはコンソメスープのような味がするが元の世界のコンソメスープとはまた違った味がしてすごく食欲が刺激される。僕はパンをちぎってスープに軽く浸し、それを口に放り込むとスープをしっかりと染み込んだパンはすごくおいしかった。
僕は気づけば置いてあった料理を完食していた。いつのまにか置いてあった水の入ったコップを飲み、食べ終わった料理を一つの皿にまとめて、厨房の中にいたミアさんに食べ終わった食器はどうすればいいかと聞いたら机の上に置きっぱなしでいいといわれたのでそのまま食堂をでる。予想以上においしい食事だった。
僕が食堂を出るとトマスさんが受付に何かしていたが僕に気づいたのか顔をあげ、僕の顔を見るとニヤって笑いうまかっただろっと聞いてきたのではいっと僕は答えるとトマスさんがおぉって軽く笑みを浮かべ、そいつはよかったといいながら元やっていた作業に戻った。
作業の邪魔をするのも悪いので僕は2階にいき、もらった鍵を使い部屋の鍵をあけ自分の部屋に入った。
部屋の中は簡素な作りになっていて、机と椅子にベット 机の上には見たことない道具が一つ置いてあった。
僕は持っていた杖を机に立てかけ、ベットに横になると疲れていたのか一気に眠気が襲ってきた。
今は眠気に抗う必要もないと思い、そのまま目を瞑った。