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ギブアンドテイク 上

作者: のきそらと

ー最近、誰かに見られているような気がする。ー

西谷太佳にしやたかはそう感じていた。

何か見られている。という根拠はないが、気配が感じられる。


誰かに見られている。


そう感じ始めたのは、つい最近のホラー番組を見てからだ。

季節は春。

テレビスタッフもこんな始まりの季節に、よくそんな特番しようとしたな。と、思うものの、

西谷家はみな、ホラーなど、そういうたぐいのものは好む家庭だった。


西谷太佳も、その一人だ。

だが、彼は、極端に怖がり屋だ。


怖いものは好き。だが、怖いものは怖い。


まさに彼には、“怖いもの見たさに”という言葉が似合っている。


そんな彼が、数日前のホラー番組に怯えてか、なぜか、人の視線を感じるようになった。


その視線はまさに、“見られている”と、はっきりわかるような、そんな視線。

暗殺者や、殺し屋などが、「そこにいるのはわかっている、大人しく出てきたらどうだ」などと気配を察知し、そう言う時がある。

だが、この視線は、そんな暗殺者や殺し屋が気付くような、そんな僅かな気配などではない。


ごく普通の、一般の、平凡な、凡庸な、最近高校二年生になったばかりの、西谷太佳が、気付くほどの熱視線。


“気のせい”だと、思えないほどの視線。

ホラー番組のせい、自分にそう言い聞かせるが、体は、脳は、思考は、そう思ってはくれないようで・・・。



「行ってきます」


朝だというのに、また熱視線にさらされる。・・・と、太佳の感覚が言っている。


これは“気のせい”これは“気のせいなんだ”

そう言い聞かせる太佳の脳裏には、、、



『もしかすると、後ろの電信柱に、“ヒト”がいるかもしれない。・・・その“ヒト”というのが、もしかすると、“ヒト”の形をしているだけの存在かもしれない。・・・髪が長くて、色白で、真冬なのに、薄手の、白の、ワンピースを着ている、女の“ヒト”かもしれない・・・・・・』



そう、人物像まで、浮かべることができるほど、太佳はこの視線に悩まされていた。


「おはよー・・・」


学校に到着し、友達と挨拶を交わす。


視線のことは、もちろん、友達にも話した。・・・冗談のように話したので、あまり信じてもらえなかったが、逆に、今感じている、その視線が、自分の勘違いだった時、恥ずかしい思いをしなくても済む。

と考えると、友達には、この話を真剣にするべきではなかった、冗談でよかった。と、判断が正しかった。と、今の太佳は思う。


冗談で話してしまったあの時は、もう助けが見つからない。と絶望しかけていたが、

今となっては、友達を自分の妄想につき合わせるのは悪いことだから、絶望しなくてもいい。とさえ思えているのだ。


「太佳ー!次音楽だよー、移動だよー」


音楽、移動教室。

ノートとアルトリコーダーを持って、音楽室へ向かわなければならない授業。


「おう、今行くー」


太佳は、ロッカーから自分の音楽の教科書と、アルトリコーダーを取り出しに向かう。

ロッカーには、それぞれ皆鍵をしていて、太佳はそのロッカーの鍵をわざわざ開けて、その教材を取り出すのだが、


「あれ?」


太佳のロッカーから、アルトリコーダーがなくなっていることに気がついた。


いや、もしかすると、なくなったわけではなく、持ってきていなかったのかもしれない。

何しろ、まだ高校二年生になったばかりなのだから。

新しいクラスになる前、荷物をすべて家に持って帰っている。

だから、持ってくるのを忘れたのかもしれない。


高校二年生になって、初めて音楽の授業をうけるのだ。

忘れ物かもしれない。・・・が、今それを確認する手立てはない。なので、一様忘れものとして、授業初めに先生に伝えておいた。


「いただきまーす」


ようやく昼飯。お腹を空かせた太佳。

お弁当を包んでいるバンダナを取り、箸を箸箱からとり、弁当を開ける・・・。


「って、箸ねぇじゃねぇか!」


ノリツッコミはいい方だ。


「お母さんめ・・・入れ忘れたな・・・・・」


若干の怨みを込めつつ、その日の昼ご飯は、友達の使い終わった箸を貸してもらうことにした。


五時間目は、体育だった。

ご飯を食べ終わった後で動き回るのは、少々しんどさを感じるよなー。

などと愚痴を言いつつ、更衣を終える。


授業はサッカーだった。なんでこんな時に限って、走り回るんだよ。

サッカーは嫌いではないが、好きでもない。

そんな体育の授業を終え、再び更衣。すると、俺は、何かないことに気付く。


「・・・俺のブラウスの第二ボタン・・・取れてる・・」


制服も一年がたてば、ぼろくなるもので、ボタンくらい普通に外れるものだ。


「ま、いいか」


自然の原理。太佳はそう思い、気にも留めなかった。


六時間目は古典。


「・・・・」


どうやら太佳はお気に入りのシャーペンをなくしてしまったようだ。

書きやすい、芯がくるくるとまわるペンだったのに・・・。

と、しょげるが、太佳の筆箱に入っているシャーペンはあれだけではないので、他のもので書くことにした。


最後の授業、古典が終わり、最後まで、代理シャーペンで乗り切った太佳。

そんな彼は下校の準備をしている時に思った。


『今日は色々と、モノがなくなる日だな』




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