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「で? 地図上に中州って国はないんじゃな? キリマロ」


「はい、そうです」


「そして、月ちゃんが使っとったような、摩訶不思議な術……、あれは中州にはない……」


「つまり」と言いかけた与羽(よう)の言葉を別の男が引き継ぎこう言った。


「つまり、全く別の世界から来た。そう言いたいんだろう、お前ぇは」


 襖の向こうから声が聞こえ、雷乱(らいらん)が刀の鯉口を切った。


「誰?」


 片手で雷乱を制止しながら与羽が聞き、襖が音もなく開いた。


「火龍」


 月が呟いた。それが彼の名前らしい。


「なんや、お前聞いてたんか。人が悪い」と海馬がにやっと笑ってそう言った。


「物の怪が大挙して襲ってくるっていうこの忙しい時に、迷子の面倒を見るとは――」


 火龍が言うと、雷乱がむっとしたように立ち上がった。


「おい、小娘。もう行くぞ。これ以上ここの連中とは付き合ってられねぇ」


 ちなみに、小娘とは与羽のことだ。雷乱はめったに与羽の名前を呼ばない。


「まぁ、待ちって」と与羽は雷乱をなだめつつ、火龍に聞いた。


「さっき、言っとったこと、本当ですか? うちらが、別の世界から来たって――」


「さてね。しかし、『中州』って国も『与羽』って名のお姫様もこの辺りじゃ全く聞かないんでね」


 与羽は、少し黙ってからこう聞いた。


「あの、物の怪って?」


 海馬が顎に手を当てながら答える。


「あいつらのこと知ってんのは、この世界でもほんの一握りやな。一言で言うなら、あれは"悪いもん"だな」


 与羽はその適当な説明にあまり驚かなかった。

 初めてあの怪物に出くわした時に、これは倒さなければならないと思ったからだ。理由はない。直感だった。


「それが今、世界で大暴れしてんのさ。それを退治すんのが、俺達陰陽師の仕事」と海馬が補足する。


「中州……じゃなぁな」


 自分達の住んでいる場所と根本的に異なった世界だと、与羽だけでなく、辰海(たつみ)達も感じてはいたが、今の海馬の言葉でそれは確信に変わった。


「じゃあ、問題は……」と与羽は月を見た。特に意味はない。


「どうやって帰るか、じゃな」

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