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「ねぇ、雷乱(らいらん)。こんなこと初めてだけど、俺は自分の目が信用できなくなりそうだ」


「奇遇だな。オレもだ」


 大斗(だいと)と雷乱が言葉を交わす中、与羽(よう)だけは怖気づくことなく、無邪気に感心している。


「すごいなぁ、今の手品か何か? どうやったん?」


「与羽、話が本題からずれそうだから――」


 しかし、この状況でもまともに頭を動かしながら辰海(たつみ)が言う。


「えー、辰海だって驚いたじゃろ?」


「それは……。驚いてるけど、あえて触れないでおこうかなって」


「つまらん奴じゃ」と、言いつつ与羽は、二人を改めて見た。二人の顔は……。


「双子?」


 瓜二つだった。


「ある意味そうかもね。こっちが月で私が日向だよ」


 与羽は、月に説明した時と同じような調子で、日向にも自己紹介をし、今の自分たちの状況を説明した。


「ふぅーん、つまり……」


 説明を聞いた後に、日向が口を開いた。

 そして、月が言葉の後を引き継ぐ。


「迷子」



  * * *



「お! 月、戻ったんかー」


 森の奥深くにある木造の屋敷、そこで一人の男が、手を振った。見た目は、大斗と同じ――二十代前半くらいか、それよりもやや年上に見える。


「おい、大丈夫なのか?」


 雷乱が、与羽に耳打ちした。


「まぁ、大丈夫じゃろう」


 与羽は呑気にそう言った。ご機嫌である。


「そうだよ。雷乱の割には慎重だね。怖いの?」


「何っ!?」


「あー、もう、やめ」と与羽は怒りたつ雷乱をなだめる。


「ん、月、誰や? そこの人達は」と月を出迎えた男は彼女の後ろにいる一向を見て怪訝そうに眉を寄せた。


 そしてすぐ、男は困ったように月に視線を戻す。


「月、ここに勝手に人を連れてきちゃ……」


 とその時、建物の方からばたばたと駆け足が聞こえてきた。


「くらあぁぁ!! 海馬!!」


 鼓膜が破れるのではと思う程の怒声に、与羽は思わず耳を塞いだ。

 与羽たちの前にいた青年は目に見えて、狼狽し慌てている。


「待て、話せばわかる、落ち着けや!」


 狼狽する青年――海馬の必死の声を無視し、建物から現れた女は、拳をわなわなふるわせながら怒鳴る。


「また、お前は人を連れ込みおって!! 朝まで騒がれる身にもなれ!!」


「違う、わしじゃない!! 連れてきたんは!!」


「嘘言うな!!」


 話が進まない。辰海は、そっと声を掛けた。


「あのー……」


「何やっ」


 その気合に、辰海は思わずすくみそうになる。


「うちら、月ちゃんに連れてきていただいたんです」


 与羽が外交用の口調で言った。

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