表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

「お前が与羽(よう)に早く帰ろうって急かすからさ」


「全く関係ねぇだろ!!」


 理不尽な文句に雷乱(らいらん)は怒った。


「関係大ありさ。慌てて余裕がなくなると、余計にあせって物事がうまくいかなくなる。常識でしょ?」


 しかし、挑発をやめない大斗(だいと)


「はぁ……」


 良く見えない辺りを見回していた少女は、彼らの会話に思わずため息をついてしまった。

 彼女は、『中州(なかす)永龍姫(えいりゅうき)』。名は与羽……。龍神の血を継ぐと言われている中州城主一族直系の姫君だ。

 確かに、彼女の青紫の瞳や光を受けて青や黄緑にきらめく黒髪、「龍鱗(りゅうりん)の跡」と呼ばれるほほにあるあざなど、他の人とは違う身体的特徴を持っている。


辰海(たつみ)、地図」


 言い争う青年二人をしり目に、与羽は幼馴染の少年に近づいた。自分より頭一つほど高い彼の隣で背伸びをし、地図を覗き込む。


「あ、与羽、ごめん」


 辰海は慌てて与羽が見やすい位置まで地図を持つ手を下げた。


「どのへんだと思った?」


 与羽が現在地の予想を聞く。


「たぶん、この辺り。歩いてきた方向、木の間から時々見える月の方向と今の時間を考えても、結構東――城下町の方へ戻ってきてるはず……」


「それは……、ないな」


 辰海の指差した地点とまわりの風景を見比べながら与羽が冷静に判じる。


「地図のその辺なら、もっと木が小さくてまばらに生えとらんとおかしい。人が住む大きな町が近くにあって、薪や食料をとるために良く人が入っとるはずなのに、こんなうっそうとした深い森になるかって。これっくらいの森があるのは、ここらへんしかない」


 与羽は山脈にある深い谷間を指差した。

 山遊びが好きで、幼いころから山に分け入って森に住む人々と交流していた与羽が言うのだから、信ぴょう性は高い、しかし、歩いてきた方向から考えて、そんな場所にたどり着くはずはないし、そこまで入り込めるほどの距離も歩いていない。


「じゃあ――?」


 辰海が不安げに見る中で、与羽は両手を上にあげて見せた。


「お手上げ。完全に迷った」


 与羽はわざと明るい声で陽気に言った。


「まぁ、暗い中歩くのも危険じゃし、野宿が無難じゃろう。幸い、火打石くらいはもっとるしな」


 そう言って、与羽はまわりの落ち葉を集めはじめた。

 暗い中過ごすのは危険だ。視界を確保し、獣などを遠ざけるためにも、明りがあった方が良い。

 与羽の意図を察した辰海も、落ち葉や枯れ枝を集めはじめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ