十
「全く」とぼやきながら雷乱は、二人が開けた“道”の周りにいる物の怪を斬り捨てていった。
雷乱が振りかぶると人型の物の怪が防御しようと腕を上げた。
その胴が真っ二つになる。
「てめぇ」と雷乱が海馬に向かって怒鳴った。
「助太刀するぜ。あんた」
「……勝手にしろ」
二人は見事なー雷乱は否定するだろうがー連携で物の怪を確実に減らしていった。
その後ろでは、辰海とキリマロが戦っていた。キリマロが弓で攻撃、辰海が接近してくる敵のほとんどを引き受けている。
この彼らの働きによって次第に、物の怪の数は少なくなっていった。
与羽が刀を前に出し、物の怪の胴を突く。その与羽の後ろから、月が飛び出し、後ろから突っ込んでくる物の怪を斬り伏せる。
それで最後だと思った月の集中力が一瞬、途切れた。
「月ちゃん!!」
与羽が叫ぶ。ここからかけて間に割り込むのでは間に合わない。与羽は両手に持っていた二刀の右の刀を鋭く投げつけた。
物の怪の頭に脇差が突き刺さり、物の怪は倒れた。
月が、与羽を見る。
「ありがとう……、与羽……」
「言い方が硬いよ、月ちゃん」
そう笑いながら言ったその時、目の前の空気がゆがんだ。
「今度は何?」
目の前の月の姿がぼやけはじめる。
元の世界に戻れる……?
「そんな……、突然すぎるじゃろ!! 月!!」
与羽は月に向かって叫んだ。
月が目を見開きこっちを見ている。何か言わなくては。まだまだ話したい、話したりない。せめて――。
――与羽は……、一人になると寂しい?
月の言葉が脳裏をよぎる。それは寂しいに決まっている。それでも――。
「忘れんから!!」
一人でも、見えなくてもどこかに自分を思ってくれている人がいる。そう知っていれば、救われることもあるのではないだろうか。
――少なくとも、私は知らない世界でたった一人になっても戦い続ける少女がいることを忘れん。
そして、欲を言わせてくれるのなら――。
「月も私のこと――」
そして、世界は消えた。




