覇王の決意
シンク王子が、ファルバス公国にて、ダレーク王と会談をこなしている頃、覇王サザノーラ・アブストは、同盟者バード族の長『バル』と秘密裏に会っていた。
「『バル』、その様子なら、あのシンクを呼び出せたようだな」
ニヤリ獰猛果敢に笑むサザノーラに対して、爽やかに微笑みを浮かべながら、肩を竦めた『バル』は、
「ああ~何とかね、思ってた以上にさといから隠すのが大変だったよ。何と言っても時間も限られてたし。まさか狂った精霊王がいつの間にか二体になってるしさ、本当に予想外過ぎるよ。問題は風の精霊王よりも。居場所すら特定出来ない水の精霊王と契約者だね。暴れ回るだけ回った挙げ句。バード族の監視者を振り払っている。その前前に。三頭しかいない白銀竜と二人しかいない白銀竜騎士。歴代最強の使い手を連れて来ることが出来て、ひとまずほっとしたさ、これで精霊王を連れたザノビアさえ倒してくれれば、サザノーラ、君の覇王としての道も。かなり安寧に歩むことができる。彼には是非とも風の精霊を殺してもらいたいね。そうすれば新たな精霊王が生まれてくるから」
毒気のない顔をして、清廉な笑みを浮かべていた。しかし端で見てる分には、好青年だが、話す内容はかなり可笑しいと本人も『バル』の側近であるバード族長筋の考えは何処かずれていた。それは彼が精霊の護り手であると同時に。バード族の本来あるべき目的が故であるが、それでもサザノーラからすれば、十分狂ってるように見受けられた。
だが、例え同盟者が狂っていようと関係ない。サザノーラにとって、覇王になる野望に有益ならば、誰だろうと使って見せる。それが覇道を目指すと決めた時からの覚悟だからだ。そもそもシンクを北大陸に招いたのは、外ならぬサザノーラ本人であった。『バル』は愚かにも危険性が高い。精霊王と対決しろとサザノーラに迫っていた。確かに精霊の加護がある『バル』であれば、精霊と対人しようと、平然とできるだろうしかしサザノーラや、仲間達は違う、精霊は脅威だし。下手をすれば多くの部下を失う危険があった。ならば自分達で危険を犯す必要はないではないか、そう考えるまでには、時間は掛からかった。サザノーラはバード族の記る。精霊のこと調べあげた。
…………………その結果。
精霊の弱点を知った。白銀竜。後は簡単だ。『バル』に。シンク王子が白銀竜の騎士であること知らせればいいだけだった。
ここまではサザノーラの思惑通りである。今は大人しく精霊王が倒されるのを待てばいい。
(どうせシンク王子は、精霊王を倒せば大陸からいなくなるんだ)
小さくほくそ笑む。
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