影の王
しばらく時を置いて、古城の謁見の間にて、実に数年ぶりに再会する。大切な姪であるリルムとの再会を心待にしていたダレークは。
ほんのりと柔らかな笑みを浮かべていた。
程なくして、白銀輝く髪をなびかせて、生まれついての女王である。魔王の愛娘が、晴れやかな微笑みを称えて、王座に現れた。傍らには長年側で見守り続けた少年がいて、その少し後に。ハッと目を引く金髪の少女が、つき従っていたあれが噂のレイラ・バレス(オールラウンダー)候補者か。その後ろには黒髪の若武者姿の豊満な美しい女性、栗色の小柄な少女、影の気配を持った女性、何れもすさまじいまでの実力者達である。いやリルム様に劣らない覇気を感じていた。
「ほう」
思わず感嘆のため息が漏れる。それはこの場にいた誰が着いたため息か、いやこの場にいた皆が吐いた可能性すらあった。
ダレークにとっては、実に久しぶりに感じた。ワクワクであった。
「姫様。お久しぶりです」
万感の思いを噛み締めるように錆のあるテノールが、古城の王座の間に響く。
「ええ。ええ!?。ダレーク。良かった……………………」
リルムは、ダレークが抱えていた闇を知っていた。それだけに柔らかな笑みすら浮かべていた様子に。ほっこりと胸が温かくなっていた。
「こうして直接会うのは初めてだね。気配は知っていたけど。貴方がリルムちゃんの叔父さんですね」
真っ直ぐな眼差し。一見柔和であり、街中であっても優しそうな少年のイメージを抱くことだろう、だが一度敵に回れば、容赦なく敵を攻撃できる素早い判断と。高度な治世を理解できる頭をもち、偉大なる父王すらも。越える逸材。それが我々の大切な姪が選んだ相手であった。
「そうだな、改めて初めましてシンク・ハウチューデン殿下、……………オレ達の大切な宝石を頼む」
静かに、それでいて思いを込めた黙礼に。リルムは頬を赤く。シンクは破顔していた。簡単に言えば、気に入ったのだダレークと言う男を。古代の民のため。見た目は青年であるが、非常に老成した雰囲気を醸し出す。苦労人らしい空気すら纏う男を、
「はい」
にこやかに弾んだ返事をしていた。
婚約者達と供に、しばらく和やかな話が弾んだ。
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ダレーク王を交えて。シンク達は改めて、なぜ今の戦乱時期である北大陸を訪れたか、その理由を語る。
「成る程…………………。ミリアーナが多分出迎えに出たと思うが、ミリアーナや属性竜王から、話は聞いていた」
精霊と竜の成り立ち。神代の時代、神々との戦いで失われた存在精霊が、竜となっていたこと。今北大陸で起こっている竜の国が滅ぼされたこと。ダレークがシンクに語っていた。
「それでは………………」
「国王夫妻の死亡が確認された。レブラント(荒くれ)含めた。竜の巣にも。竜はいなかった。五大竜王それに竜の卵。幼竜は念のため別にしていたので助かったが………………」
重々しい空気が流れた。相手は精霊王を解放して、数多くの精霊すら従えた存在。そんな存在が戦乱の世に放たれている。改めて危機感すら覚える。
(これは思ってたよりも…………)
リルムちゃんの前後策が有効だったと理解した。
(それよりも放たれている精霊王が二体いる可能性がある。ゼンは大丈夫だろうか?)
自分と同じく才能に恵まれた同年代の友人王を心配する




