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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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群雄割拠


 時は、『バル』が北大陸を離れて、しばらくたったある日のこと、北大陸にある、国々に激震が走る、風の精霊リルリルを率いた。元長老会ギネス第1席。アブスト族長老ザノビアによる反乱が起こった。僅か数日でギネスは陥落。他の長老含めた有力部族の部族長達の行方不明。多くの兵士すらまるでなかったかのように消え失せていた。さらには竜騎士の国シルバまで陥落。竜の巣すら壊滅と。信じられぬ一報が舞い込んでいた。


 それは新たな国々が生まれて間もなく。僅か半年に満たない時間である、一月とせず。二つの国が消えたことになる。さてそれ以上の異常事態。民よりも為政者にとって頭を抱える事が密かに起こっていた。





◆◆◆◆◆◆◆



北大陸南・ターミナル



北大陸の町・国を繋ぐ中立国グラビデ傾国の北西。ラノバ王国国境にある自治領。カイ族が納める海南諸島含めた豊かな漁場と。海産物の交易で、莫大な財をなしてる。いわゆる勝ち組部族として知られていた。部族の男達は、その多くが幼少より水泳術に長け。船の操縦技術を有する船乗りであり。海戦を得意にしていた。


  領主館の一室。普段領主は執務室にこもり交易に従事する商会関連の仕事に奮戦する自己。いわゆるお昼頃。黒光りする肌。上質な服を見事に着こなし。内側から筋肉の質感が察せられるほど。鍛え上げられていた。男の名前はカイ族の長老で、本来長老会ギネスの議席を預かる人物で、名をバディロー、初老に掛かる年齢の筈である。そう本来ならば、息子が領主として、館にいたのだが………、


「さてムデーマ息子よ。考えは変わらぬか」


じろり平眼流した先に。ズタボロの存在がいた。視線の先には、元は豪奢な仕立ての衣服を身に纏う肥え太た子供が、悪臭放つ粗相をしていたが、まごうことなく。バディローとズタボロの男との血を理解させるほど。顔立ちは似通っていた。ただしズタボロの方は長年の贅沢な暮らしのため余計な肉がついていて、まるでうらぶれた中年貴族に見える。対して悠然と豪奢な椅子に座り。長い足を組んでいた初老のバディローの方が、自分の息子よりも遥かに若々しく。まるで青年のようなツヤ肌。目は老獪な輝きを放つが、全身からは、覇気を纏い。ひとかどの武人の雰囲気を放っていた。


「くどい親父、今さらたかが大陸の覇者になど興味はない!。今や時代は海南貿易の時代だ。五大陸の商人を相手にしていた方が遥かに面白いからな」


 鋭い眼差し。例え見た目こそ見る影もなくなったが、強い覇気を纏っていた。


「ほう、残念だ……。本当に残念だムデーマ。お前には海の戦士として、我を越える才能に恵まれていたが、ウオルガン」


「グルルルル」 


「ヒッ、よ、寄るな。寄るな化け物」


部屋の窓の下に置いてあった水槽。魚が朝まで泳いでいた。そんな領主の執務部屋のインテリアだが、たゆむ水から。獣を彷彿とさせるうなり声が聞こえてきた。本来あり得ない現象であった。


 恐怖に震えるムデーマは、眼を剥きながら。水槽を食い入るように見ていた。まるで肉食獣に睨まれている兎のような反応であった。


ピチャリ、ちゃぷん、たゆむ水はゆっくり物理的法則を無視して、水槽から水が逆回転のように床に落ちてゆく。全ての水が落ちた後には、一匹の半透明な獣が立っていた。


「やっやめろ!、止めてくれ親父、な、なあ親父止めてくれ。嫌だ。嫌だ。俺は死にたガボッ」


「下らん、最後まで下らん戯れ言を言うとはな、実に下らんな、こんな物か息子とは」


バディローの目の前で、頭を飲み込むように水球に包まれ。必死にもがき苦しむ様を。冷徹な眼差しで、何の感情すら浮かべず。やがて動かなくなる様子をただ見ていた。


「少なくとも新しい精霊を産み出す。役には立ったか」


この日人知れず。領主館で人が全て消える事件が起きていた。表でザノビアが、裏でバディローが、精霊を増やすため。不要な者の処理を行っていた。各国がそれに気付いた時には、かなり後手に回ることになった。




◆◆◆◆◆◆◆





━━━━━数日後。



ラノバ王国。



この日プライゼン王は、予期せぬ使者と対面していた。


「はっ初めてお会いします。ヒナエ・バウスタンと申します」


 ヒナエ・バウスタンはこの日。ノノフレイミと供に北大陸。ラノバ王国に来ていた。シンクの竜魔法を用いての突然の訪問である、


「ノノフレイミ・ラネスです」


 無論プライゼン王は、友人の婚約者である二人のこと知っていた。しかしなぜこのタイミングなのか、疑問はあったが、


「友の婚約者を使者に送る。」 


 柔らかな眼差しに。言い知れぬ不安が揺れていた。

あのシンクが、自分の婚約者を使者に送る理由がある。漠然とした不安が、聡明なる王の胸中にもやのように黒い暗雲が広がっていた。


「プライゼン王。シンク並びに、バード族の長『バル』より提案の義があり。私達二人が使者として参りました」


前口上を聞き。思わず宮廷魔導師で幼なじみのナルク・バード。その師で、ラノバ王国相談役フォルク・バード老を伺うと。フォルクスが珍しいことに。

 驚愕を顕にしていた。プライゼンはバード族の長を知らない。いや今まで聞いた事がなかった。ナルクはきょとんととして、妻リオナ、義弟カノア将軍他。王国の名だたる誰もがざわめきを隠せない。


「………一つ聞いて良いかの使者殿達よ」


 ややいがらぽい声音。困惑を隠せぬフォルクに。ヒナエ、フレイミは静かに頷く。


「精霊が解放されたのか?」








 フォルク老の問いにヒナエに代わり。フレイミが答えた。


「私達は炎の精霊を従える『バル』と対面して、会話しております。場所はアレイク王国の王都カウレーンにて、私達二人は正直なところ『バル』を信用しておりません。ですがシンクさんが必要と考えたので、仕方なく今は手伝いをしております」


 あまりな物言いとフォルク老にとって、一族の長を不審者を語るような口振りに。なるほどと苦笑を深めた。

バード族の中でも。荒れ地の集落で暮らす者達は、外に出るバード族とは意識。考え方が違っていて。精霊を神のごとく崇め。自然のあるがままを受け入れる暮らしをよしとする。そんな部族の考えに反発する知恵者が、集落を離れた結果。二つの思想によって部族の中でも割れていた。フォルク老含めた集落を捨てた改革派と。古い思想を守る固執派とに。


「なるほど白銀竜か………、自分たちの崇める精霊達の解放が目的か『バル』は」


 老人の目に浮かぶは、侮蔑と忌々しい気持ちであった。そんなフォルクを見て、二人は確信した。


(やはりあの男…………信用なりませんね)


 ヒナエが、シンクから此度の話を聞いたのは数日前のこと。その時から嫌な予感がしていたが、やはりと言うか、あの男のことが、信じられなかった。言い知れぬ不安を覚えていた。理由は分からないが、あの男を見た瞬間。この男はシンクにとって、危険な敵になる。そんな予感があったのだ。


傍らのフレイミ。彼女はヒナエの不安とは違って、わざわざ他国で教師をしていたシンクを。自分たちの都合で使おうとしてると。疑心暗鬼によって『バル』を危険視していた。何故ならば、『バル』は精霊と戦うすべを持っているのに。シンクにわざわざ相談した点。それに気付かれないように誘導したこと。情報を小出しにして、シンクから聞かれない内は答えないようにした点から。信用出来なかったのだ。


 フォルク老は鋭い洞察から。それとなく気付き。先ほどの発言である。


「フムなるほどお嬢ちゃん達の考えはわかった。それで使者としての仕事を頼む」


「承知致しました」


  自分たちの考えを伝えた上で、『バル』とシンクの口上を聞いて会議室はざわめきを隠せない。

やや呆然としながら呟く、


「三國同盟」

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