閑話風の精霊リルリル
元々別にしていたショートと統合しました
エピローグ
最初に感じたのは、強い欲望だった。
わたしが意識を持つようになって、数百年。神々の戦いや。沢山の人間が死ぬ暗い感情。恨み、うめき声、怨念様々な感情を感じた。
世界には人間には見えない。輪廻と呼ばれる魂の生成所が存在する。わたし達精霊は、死者の魂を育み。世界の命に還元するシステム。それは神々より託された仕事である。
そもそも━━わたし達精霊は、属性という概念は存在していない。本当のわたし達の名前は、世界精霊である。属性が付けられるのは、地上に呼ばれて、束縛されたり、人間と関わる内に自我を持った精霊が、属性を与えられた存在。四大精霊と呼ばれる理由である。精霊は精霊力が溢れる。特異点に集まる性質がある。
それは例えば清廉な泉。一年中吹き荒れる谷や。自然豊かな場所。活火山に集まりやすい性質を持っています。
一般的な知識としては、属性に合わせた場所に集まるようだ。
そんなわたし達精霊が、自我を持つことがある。長い長い仕事をしていると。そんなこともあると。竜騎士だった人間が教えてくれた。
わたしはリルリル。人間に名前を付けられた精霊である。人間は力ある精霊を。精霊王と呼ぶのだ。
そんなわたし達精霊の中でも。力があった四つの精霊は、人間に封印されてしまった。
そんなある日のこと。大地の精霊だった老君は、悲しいことにモンスターに食べられてしまい力を失ってしまう。
その代わり。新しい大地の精霊になってくれた暴君=土竜が、大地の精霊王になってくれて、どうにか遅滞していた輪廻が、回り始めた。
ようやく戻って来てはいるが、
残念なことに、世界に魂が溢れてしまっていた。このままでは……、本当に大変なことになってしまう、せめてわたし達の誰か、もう一人が解放されれば、精霊王の力を使い。世界精霊達を働かせてあげれるのに……。
だから精霊達は願った。
誰かわたし達を解放して欲しいと……、
そんなわたし達の願いに答えれる者が現れた。元々はわたし達と語ることが出来た存在である。
『バル……わたし達を助けて』
『暗い……、とっても暗いの』
『空を飛びたいな……』
わたしは夢に見ます。雲一つない蒼空で、日差しがぽかぽかだったり。ギラギラだったり、雲がいっぱいだったり。雨がざ~ざ~降ってる日にも。空を駆け抜ける爽快さは変わらない。わたしは望むの、
また竜と一緒に飛びたいなと。あの白銀竜の女の子はまだ生きているらしい。また一緒に。出来るなら人間の竜騎士と競争するの♪。
例え少しでもいいから━━。空が見たいな。
そんな暗闇の中……。暗くて、欲望にまみれた人間がやってくる。わたし達は、輝石の中に封印された。やがて離され。
そして……、
人間を殺すことを強要された。輪廻の担い手である精霊。そんなわたし達に……。
わたし達は少しずつ壊れていく。
精霊としての力を強め。人間の魂を育み育てるわたし達が━━。
人間を殺し。村を、街を破壊することを強要されていった。
だから老君は幸せだったかもしれない。
だからわたし達を殺せる者に。わたし達の封印解放と。壊れてたら存在の破壊を望むの。
だって……、
わたしがこれ以上人間を殺したら。わたしに名前を付けてくれた人間が悲しむから。だからねバル。わたし達を殺してね。そうすれば新しい精霊が生まれるから。お願いねバル、わたし達を解放して、
そうすれば、生命の輪廻が回るから。
わたしはリルリル、風の精霊と呼ばれている存在である。
◆◆◆◆◆◆
━━北大陸の東。
荒れ地と呼ばれる地に。小さな集落があった。星を見上げた青年バルは、赤い輝石を額に当てていた、中で眠る炎の精霊と意識を合わせていた。
「他の精霊からの思念が聞こえる、竜騎士か……」
バルは確信していた。風の精霊リルリル、恐らく10長老会ギネスに囚われている存在。
「━━まさか、彼女は、封印から抜け出そうとしているのか?」
バルは知らない。老君と呼ばれていた。大地の精霊が封印されていた。古い炭鉱跡に作られた施設に現れたこと。
そんなときとても懐かしい白銀竜の匂いと。竜の気配を感じた。とても懐かしかった。シンクと出会っていたことは偶然ではない。
狂乱渦巻く北大陸で、一つの悲しい物語が紡がれようとしていた。
始まりのエピローグ
聖アレイク王国。
シンクはアホウネことアレンザ・ホウネリアの誕生日を祝った帰り道。
本当はスッゴく嫌だった。
でもリルムちゃんの頼みで、仕方なく。仕方なく手伝ったのだ。本当に嫌だったから二度言ってみた。やれやれ早く帰れば良いのに。何でアホウネが、最優秀者に選ばれたか、スゲー納得いかない。どうせなら戻って来なければいいのだが、
そんな訳にはいかないのが面倒な所だ。
「やれやれ面倒なことだ」
「リルリルリルリル。そうなの?」
「ん?」
いつ現れたのか、クイクイと手が引かれた。まるで気配を感じなかった。それでも。懐かしい声音を聞いていた。
「もしかしてリルリル?」
緑の髪。白い着物姿。整った顔立ちの少女。
「うんリルリルだよ♪」
「久しぶりだね。リルリルはどうやって、ここに現れたのかな」
今のシンクならわかった。彼女リルリルが、普通の存在ではないと。彼女は人間ではない。ようやく理解した。
「わかった?、えへへ。リルリルはね精霊なの。白銀竜の騎士に会いに来たんだよ」
「━━精霊?。もしかして暴君や、ファーストと同じ存在かな?」
「!!!」
まさか自分の存在を信じてくれただけでなく。大地の精霊を知ってる口振り。それに始まりの精霊の名前まで、とても驚いていた。
「あっ、驚かせてしまったようだね。ぼくの父と祖父が、暴君の相棒でね。暴君孫の世話とかしていたから。聞いていたんだよ」
「ほえ~。シンク兄ちゃん凄いね。わたし達の話。すぐに信じてくれたの初めてだよ!」
朗らかに笑うリルリル、どうやら自分に用があるようだ。
「ネネお願いがあるの。リルリルね白銀竜と一緒に。お空が飛びたいの~」
突然の申し出だが、シンクは快諾していた。
━━そして、リルリルは、初めて見た赤い瞳の白銀竜シンクレアと供に。日が昇るまで、いつまでもいつまでも。飛んでいたと言う。
また書けましたらよろしくお願いします




